ウオームアップとクールダウンをかんがえる

 

 

Q1 運動の前後には、ウオームアップとクールダウンが必要だと聞きました。ウオームアップやクールダウンによって、からだにどんな変化が起こるのでしょうか。

 まず、ウオームアップの効果についてお話します。
 ウオームアップとは、スポーツや運動の前にあらかじめ、からだを軽く動かし、筋肉や内臓が激しい動きについていけるよう準備を整えるものです。

体温が上がり、筋肉の出すパワーが増大する
 ウオームアップによってからだを動かすと熱エネルギーが生まれ、筋肉の温度と体温が上昇します。これがウオームアップによる最も大きな効果で、からだの機能を高めるうえで欠かせないものと考えられます。
 筋肉の温度が上がると、組織や細胞の働きが活発になって、酸素をたくさんとり込めるようになり、筋肉の出せるパワーも大きくなります。また、筋肉の抵抗が減って動きがよくなるなど、運動にとってきわめて好都合な変化が期待できます。

肺や心臓の、運動への適応性を高める
 ウオームアップによって、運動が効率よくスムーズに行われるために必要な換気量や心拍数、心拍出量の増加が速やかになり、筋肉への血流も増加します。これによって、運動中、疲れにくくなるのです。

神経系の反応が速くなる
 ウオームアップを行うと大脳の興奮性が高まり、反応が速くなることが知られています。また、体温の上昇に伴って神経の伝導速度が速くなり、筋肉の収縮がより速くなると考えられます。

からだの各部の柔軟性が高まる
 ウオームアップで体温が上がると、筋肉や関節などの各部の柔軟性が高まります。これによってスムーズに運動に入れるようになり、運動中も筋肉や関節へ無理がかかりにくくなります。
 運動中には筋肉や臓器は高い水準で活動しています。しかし、運動開始後、筋肉や臓器の活動が必要な水準に達するには、ある程度時間がかかります。
 そこで、スポーツや運動の前にあらかじめウオームアップを組み込み、からだを温め、肺や心臓、神経などの働きを活発にしておけば、無理なく能率的に目的の競技や運動を始めることができます。

筋肉の傷害を予防する
 筋肉は温度が低いと動きがにぶく、からだが冷えたままで急に動くと肉離れや筋肉痛などを起こしがちです。ウオームアップは筋肉を温めて動きやすくし、また血液を筋肉に十分送り込んでその弾性を高めます。これは、運動中の筋肉傷害の予防に役立ち、特にストレッチングが効果的とされています。

心臓の事故を防ぐ
 ウオームアップなしの激しい運動は、心臓の事故の危険性を伴います。ウオームアップを行うと、運動中の心電図異常の出現率が減ったり、長時間運動しても心臓が悪い影響を受けなくなるなど、注目すべき報告があります。ウオームアップには、心臓の事故を防ぐ効果もあるとみてよいでしょう。

Q2 ウオームアップの具体的な方法には、どんなものがあるのでしょうか。

 ウオームアップには、@受動的ウオームアップ、A一般的ウオームアップ、B専門的ウオームアップの3つがあります。

受動的ウオームアップ
 ウオームアップが体温を上昇させることに注目し、運動によらないで、赤外線照射、超音波、マッサージ、温水浴や温水シャワーなどで体温を上昇させ、ウオームアップの効果を得ようとするものです。

一般的ウオームアップ
 ストレッチング、柔軟体操、徒手体操など、一般的な全身運動でウオームアップの効果を上げるものです。からだのさまざまな器官に影響を与え、各部分の能力を高めるのに役立つとともに、特に深部の筋肉の温度を効果的に高めます。

専門的ウオームアップ
 目的とする競技や運動の動きをウオームアップに取り入れたものです。野球の前のキャッチボールやバッティング練習などがこれに当たります。リハーサルによって筋肉や神経相互の動きを調整する働きがあり、特に高度の運動技能や微妙な動きを必要とする運動に効果があると考えられます。

「一般的+専門的」ウオームアップが効果的
 一般的ウオームアップと専門的ウオームアップは、ともにからだを動かす能動的方法です。その効果の程度は研究によって評価が分かれますが、普通は「一般的ウオームアップ+専門的ウオームアップ」の組み合わせがよいとされています。
 ウオームアップでは、あくまで個人の体力に応じて時間や強度を工夫することが大切です。初心者が鍛練された人と同じウオームアップを行うと、目的とする運動に入る前に疲労がたまってしまいます。
 まず、自分の体力に合ったウオームアップの運動を根気よく続けてください。しだいにからだが鍛練されると、より短い時間で強いウオームアップが可能になり、効果が上がるとされています。
 一般的には、ウオームアップを次のようにまとめることができます。
 @ウオームアップの過程でしだいに運動の強度を増していく。
 A運動に関係する関節を十分に引き伸ばす運動(ストレッチング)や軽い運動を含める。
 B運動の順序を自然に流れるように組み、リズミカルに行う。
 C多様性を持たせて、ウオームアップを楽しくする。日によってはいつもと違う運動を行い、興味を持ち続ける。
 Dからだのすべての部分を動かしたり伸ばしたりする。特に図1・2のような動きを含む運動を行う。
 E時間は数分〜20分程度。体力の向上とともにウオームアップの時間を減らし、競技に時間をかける。
 Fストレッチングとジョギングなどの心肺機能を高める運動の両方を含める。


Q3 クールダウンには、どのような効果があるのでしょうか。

 運動後の疲労回復を促し、めまいや吐きけを防ぐ
 競技やスポーツのあとに軽い体操やジョギングを行うと、すぐに休息する場合よりも疲労の回復が早く、運動後のめまいや吐きけなどを防ぐ効果があることは広く知られています。
 クールダウンとはこうした「整理運動」を意味し、スポーツなどのあとに当然行うべきものとされています。

疲労物資を取り除く
 スポーツや運動を続けると、しだいに筋肉や血液中に疲労物質(乳酸)がたまってきます。運動中にだんだん力が出なくなるのはこのためです。
 クールダウンが疲労回復に効果を持つのは、軽い運動によって血液が豊富に流れ続けることによって、乳酸を分解する肝臓や腎臓などへたくさん乳酸が運ばれるためです。
 また、筋肉へも酸素がたくさん運ばれて乳酸の分解を促します。
 運動後、安静にしたときと、軽い運動でクールダウンを行ったときとでは、クールダウンを行ったほうが、乳酸の除去率が高いことが分かっています。そこで、短い休息をはさんで競技が続くときにも、休息中にも積極的にクールダウンを行ったほうがよいと考えられます。

めまい・吐きけ・失神を防止する
 筋肉の運動は、静脈の血液を心臓に送り返すポンプの役目を持っています(特に下肢の筋肉はこの役割が大きい)。運動後すぐに休むと、この筋肉ポンプの作用がストップして、一時的に心臓へ戻る血液の量が不足します。
 このため、運動後に、体力のない人が脳貧血を起こしたり、トレーニングを積んだ選手が吐きけやめまいを感じたりすることがあります。
 クールダウンで筋肉ポンプを動かし続けると、心臓へ血液が戻る量と心臓のペースダウンの過程が一致し、めまいや吐きけ、失神の予防に役立ちます。

過換気を防ぐ
 運動のあと、速く深い呼吸を繰り返すと動脈血中の炭酸ガス濃度が低くなり過ぎることがあります。これを過換気と呼び、筋肉のけいれんや血圧の下がり過ぎの原因になります。
 クールダウンを行えば、血液中の炭酸ガス濃度がコントロールされ、過換気の症状を防ぐことができます。

筋肉痛を予防する
 運動後しばらくして現れる筋肉痛は、運動中の乳酸の蓄積、筋肉の硬直、筋肉の損傷などによるとされています。クールダウンは、緊張し過ぎた筋肉をほぐし、乳酸の分解を速める作用を持ち、筋肉痛の予防に大きな効果が期待できます。特に、ストレッチングがよいとされています。

Q4 クールダウンのプログラムの組み立て方は、どうしたらよいのでしょうか。

 一般的には、クールダウンを次のようにまとめることができます。

クールダウンプログラムはこう組み立てる
 クールダウンはウオームアップの逆の順序で行うのが普通ですが、プログラムを作成するにあたっては次のような原則に注意してください。
 @緊張を和らげ、リラックスできる運動を重視する。
 A時間は5〜10分間で終わるようにする。
 Bからだの末端から心臓部へ血液を送り返すような運動を選ぶ。
 C体力に応じて、クールダウンの終わりに心拍数がふだんの水準に戻るようにする。

クールダウンに適した運動
 以上の原則を満たす適切な運動は、
 @ゆっくりしたペースのジョギングと歩行
 A関節の曲げ伸ばしを中心とした体操
 B各種のストレッチングなどです。いずれも、リラックスし、ストレスのかからないやり方で行ってください。
 ウオームアップはスポーツや運動に向けてからだの準備を整え、クールダウンは疲労回復を促します。ともに、運動中や運動後の傷害の発生を予防する働きを持っています。
 そこで、スポーツや運動の際には、「ウオームアップスポーツ・運動クールダウン」を一体のものとして考えることが大切です。

順天堂大学スポーツ健康科学部教授

 

 

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