フィリップス・コレクション展
来館日時:8/18
場所:森アーツセンターギャラリー
『舟遊びの昼食』が日本にやって来ました↓

ルノワールの『舟遊びの昼食』といえば、印象派の超有名作の一つなので、よく貸してくれたもんです。フィリップスコレクションは個人コレクションとしては世界でも一級のものですが、『舟遊びの昼食』は目玉商品なので、たぶんルーヴルがモナリザ貸すくらいの気分でバーンと貸してくれたに違いありません。館内で上映していたビデオでも、学芸員の皆さんは『舟遊びの昼食』が日本に行くということで大興奮していました。ダンカン・フィリップスは「『舟遊びの昼食』のためだけに世界中から人々が僕のコレクションを見に来るだろう」とか言っていたそうで、現実にそのとおりになったわけですが、我々東京在住の人々はわざわざ荷物全部預けてテロリストでないかチェック受けて飛行機に乗ってワシントンまで行って『舟遊びの昼食』を見なくてもいいわけなので、だいぶ幸運なのかもしれません。
で、この『舟遊びの昼食』は、他の60点ばかりとは別格ということで、中ほどに「至聖所」みたいなのをもうけて、一点だけ奥まったところにかけられ、周りにソファなど置いてあります。ここにたどり着く前に、フィリップスコレクションの沿革に関するビデオを見て身を清め、心の準備をしなければなりません。最後の最後にやっぱり「至聖所」をもうけてフェルメールを飾っていた「画家のアトリエ〜栄光のオランダ・フランドル絵画展」と似たような感じですが、『画家のアトリエ』以外は小作ばっかりで展示の仕方もイマイチだったオランダ・フランドル絵画展とは対照的に、フィリップスコレクションはシャガールやカンディンスキー、クレー、セザンヌ、ゴッホ、マティス、エル・グレコ、ゴヤ、モネ、アングル、ドーミエ、シスレー、ロダン、ジャコメッティなど他の作品も非常に充実していてまさに「アートの教科書」なので、オランダ・フランドル絵画展ほどあこぎなものではありません。
で、ようやく「至聖所」にたどりつくと『舟遊びの昼食』に拝謁できるわけですが、思っていたよりもだいぶ大きい作品でした!実のところ私はそんなにルノワールが好きなわけじゃないのですが、こういう日常のなんでもない光景をこれだけデカく、しかも生き生きと描いて人を飽きさせないというのはやっぱりすごいのではないかと思います。「アートの教科書」だけあって学芸員の解説にも気合いが入っていて、いい意味で「教育的」です。私はあんまり「教育的」な展示は好きじゃないのですが、フィリップスコレクション展の解説は結構時代背景など役に立つ解説が多くて好感が持てました。で、『舟遊びの昼食』の解説によると、この絵は19世紀フランスの中産階級の人々を如実に描き出しており、帽子の形ひとつとってもその人の職業や階級がわかるのだとか。たしかに全員かぶっている帽子が違います。右側のちょっとハンサムな男性は無帽ですが、それはジャーナリストだかららしい。無帽は階級や職業による区別を受け入れないことを示し、つまり自由の象徴なんだそうです…おもしろい。
他にもいい作品はいっぱいあります。最初にエル・グレコとゴヤが並べてあるのですが…

なんと、同じ人です。両方とも改悛した聖ペテロ。左のかっこいいほうがエル・グレコ、右側の白雪姫のこびとみたいなのがゴヤです。別にペテロの改悛にはあんまり興味ないのですが、これだけ違うとおかしいですねー。エル・グレコは超ドラマティックで登場人物もハンサムなんで私は好きなんですが、ゴヤはもっとリアルで人間的な感じがします。ゴヤにかかるとペテロもそのへんのおっちゃんなんですね。
こちら、私が嫌いだけど私に体型が似ているらしいアングル↓

ううん…似てない似てない。
生まれた街のあの白さをあなたにも見せたい、シスレーの『ルーヴシェンヌの雪』
超カラフルでおもしろい形のカンディンスキー『連続』↓

この絵、大変気に入りました。なんか楽しくないですか?
この他にボナールやヴュイヤールなどもあって、近代美術の見本市って感じです。上映されているビデオもなかなかおもしろく、とくにフィリップスコレクションの教育プログラムに関するビデオがよかったです。子どもたちを『舟遊びの昼食』の前に連れてきて、登場人物(全員誰だかわかっています)と同じ帽子をかぶらせて遊ばせるのだそうです。日本でもそういう参加型教育プログラムをもっとやればいいのにと思いました。私と母はメトで彫刻と同じ格好をして写真を撮りまくったのですが、それと発想は同じ気が…
ということで、アートの教科書を堪能できる展覧会でした。六本木ヒルズは嫌いなんですけどね。
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