今年の一位はとにかくこれで決まりです。洗練されたニューヨークのクラブミュージックと泥臭いアメリカ南部のブルース&カントリーをミックスしたサウンドはまるでアイスの天ぷらのように奇妙奇天烈ですが、それが実にピッタリはまるあたりがシザー・シスターズのキャンプたるゆえん。シングルカットされた一曲目が思わずときめくダンスチューン(?)なのにも関わらず'I Don't Feel Like Dancing'とかいうへそまがりさも素晴らしい。70年代のキャンプなグラム・ロックというのは基本的にセクシーさの後ろに暗さが透けて見えるところがあって、おそらくシザー・シスターズに強い影響をあたえているであろうロキシー・ミュージックなんかは「核戦争後のパラダイス」なんていう比喩で言われたりもしていて実に繊細で、80年代に入ってもアンドロジェナスなバンドっていうのはかなり神経が細いというか、危うさと脆さのバランスをかろうじて保っているような感じがあったのですが、シザー・シスターズはまあところどころ繊細さを垣間見せてはいるもののむしろマドンナなんかに近いような強靱さをそなえている気がして結構ポジティヴです。うまいことニューヨークのゲイカルチャーとヨーロッパのグラムが接合した感じで、「アメリカ的」な明るさと「イギリス的」なアンドロジニーの感覚を兼ね備えた稀有なバンドです!2007年もキャンプにいくぜ!!(うーん、誉めすぎのような気がしてきた…サードアルバムが箸にも棒にもかかんないほどひどかったらどうしよう。)
不埒なカントリー・ガールの歌について語った次は真面目なカントリー・ガールズに登場していただきます。ディクシー・チックスはテキサス出身でブルーグラスをベースにしたまさにど田舎のカントリーを奏でるバンドですが、このアルバムは今までのアルバムにもあった細やかさと優しさに加えてシリアスな政治的主張も盛り込まれており、どうやらソングライティングにも今までより深く関わっているようでサウンド的にも一回り成長しています。保守的なカントリー界にあって自らの政治的主張を貫きつつ、セールスのためにポップ路線にも走らずにひたすら田舎臭いサウンドを奏でる様子はまさに「アメリカの良心」という感じです。'Not Ready to Make Nice'なんかは実に劇的なアレンジで「いい子になる準備はできてない」なんていうタイトルも意味深長ですが、アルバムタイトルにもつながる'The Long Way Around'などはもう少し明るいサウンドで、女性に対する応援歌になっていると思います。ディクシー・チックスはsisterhoodを重視するバンドだと思うのですが、ブッシュ批判事件などをメンバー三人の団結で乗り越えたことがよりいっそうシリアスかつポジティヴな音作りにつながっていると思います。
'The Dutchess'(公爵夫人)というタイトルはアーティストのファーギーがセーラ・ファーガソンと同じ名前だからだそうです。アーティストのファーギー自身は薬漬けだったせいでステージで失敗しまくっているらしいのですが、このアルバムはステージではなく録音なので質は良く、ヒップホップにロックやR&Bがごちゃまぜになったようなハイブリッドなサウンドで、過剰にハイパーフェミニンな感じが特徴です。とくに放送禁止用語連発の'London Bridge'は意味深長な歌詞でなかなかよろしい…。
オーストラリア出身の正統派ロックバンド。ビートルズばりの作り込んだコーラスに同郷の先輩であるAC/DCのようなハードロックのギターサウンドを織り込んだ熱いロックアルバムです。熱いばかりではなく結構いろいろなバンドを研究しているようで、構成は多少『アビイ・ロード』を意識しているようだし、その名のとおり(?)ちょっとジョーン・ジェットっぽかったり、レナード・スキナード風なカントリーっぽいギターを入れたり、先達から学んだ成果を発揮しつつ単なる真似に終わっていない実に変化に富んだサウンドで楽しませてくれます。惜しむらくはプロデューサーがオアシスを手がけている人で、ちょっとアレンジがオアシスっぽいこと…全体的にもっとヘヴィなアレンジでも良かったような気がしますが、'Bring It on Back'のような曲は優しめのアレンジでも十分聴かせてくれるバラードなので、まあいいとしましょう。全体的にモノクロームなかっこいいサウンドで魅せるアルバムです。
女声ヴォーカルメタルバンド、エヴァネッセンスのセカンドアルバム。ファーストアルバムほどの衝撃はありませんが、ソングライティングの中心だったベンが脱退してエイミーのバンドになったため、ピアノがかなり前面に出ていわゆる「女歌」っぽさがより強くなった…ような気がします。'Call Me When You're Sober'は赤ずきんちゃんを模したビデオで、いかにも女の子の妄想爆裂の残酷おとぎ話になっていていいですね。しかしエイミーの貫禄たっぷりのヴォーカルはやっぱり素晴らしい…こう言っちゃなんですが、メタルのヴォーカルらしくがっしりしていて全然やせてないとこがいいと思います!蚊とんぼのようなモデル体型ではとてもヘヴィメタルのヴォーカルなんてつとまりませんからね!3位のディクシー・チックスのヴォーカルであるナタリー・メインズもそうですが、いかにも田舎で元気に育った(?)ような骨太でモデル体型とは程遠い女性シンガーをどんどん応援したいと思います。