シングル曲"The Good Ones"は抑制のきいた曲調で、電子楽器を活用したリズムもクールさを醸し出しています。ところどころでつんざくように入ってくるギターもすごくブルージーでガレージっぽく、効果的。そしてやっぱりヴィヴィの抑えたヴォーカルのセクシーさはすごい。プロモーションビデオではアラニスみたいに長い髪を振り乱しながら歌っていましたが、アラニスと決定的に違うのはヴィヴィのヴォーカルは本当に感情がよく抑えられているというところです。酒でのどがつぶれたブルース歌手みたいなかったるそうな歌い方なんですが、ブルースにつきものの生の感情の表出というのが全然ない。この曲のビデオではなんかピンク色の絵の具が散乱してモノクロ画面が急にカラーになるという編集が行われていましたが、こういう液体噴出系の演出というのは最近の流行なのでしょうか…グリーンデイなんかもやっていたし。とはいえ今までのビデオではモノクロのイメージが強いキルズがこういうどどピンクなんかでも映えるんだなぁという意外性はありました。
タイトル曲"No Wow"もリズムの使い方やギターの入り方なんかがうまくてよくできてはいるのですが、"The Good Ones"ほど耳に残らないのが難点です。ホテルの囁きコーラスがセクシーな緊張感を醸し出しており、そこはいいと思います。ただヴィヴィのボーカルはこの曲ではガービッジのシャーリー・マンソンみたいな感じで、ちょっと頑張りすぎのような気もします。
全体的には聴き応えのあるアルバムですが、前作"Keep on Your Mean Side"よりはいささかインパクトが弱いかな…という感じはあります。前作があまりにも衝撃的にかっこよかったせいもあると思いますが、新作では耳に残る曲がシングル曲の"The Good Ones"くらいしかなく、他の曲はどれもよくできていはいるもののいまいちパンチに欠ける気がします。今後の方向性としてはもうちょっとピースフルなパンク路線に行ったほうがよいのではないかと思いますが、この作品でもヴェルヴェッツやパティ・スミスの影響が非常に感じられ、徹底してシンプルなロックを作るという志の高さが感じられます。