このお話でポイントとなるのは、まずタモーラとアーロンの人種問題でしょう。アーロンは黒いムーア人ですが、タモーラはF・ロイスターによると'ultrawhite'であって、ローマ人よりも白い、とことん真っ白な女なんですね(詳しくはロイスターの'White-Limed Walls: Whiteness and Gothic Extremism in Shakespeare's Titus Andronicus', Shakespeare Quarterly, 51. 4(Winter, 2000), pp. 432-55を参照)。ローマの女よりももっと白く、もっと透き通るように美しい女の遺伝子を取り入れようとするローマの男たち…なんかナチスのレーベンスボルン計画のようで不気味です。その反面、タモーラはちょっと白いローマの男たちよりも真っ黒な肌のアーロンを愛しているんですね。白人男と結婚しつつ黒人の愛人の子を産むタモーラの多産な欲望はローマへの脅威なのです。