「ゼェ、ゼェ・・・」




いきなりではあるが、大和は疲れていた。





ミッドウェイを目指して一晩中全速で走っていたためである。




元々体力には自信の無い現代っ子である。



実に情けない話であった。





そのため、大和は横たわっているような状態だ。



もちろん「大和」が横たわれるわけがないため、あくまで大和のイメージである。










「速力27ノットを維持しています」



大和の状態など知る由も無く、「大和」の内部ではそんな報告が行われていた。



「昨晩の状態に関する情報はないのか?」


司令長官と思しき人物が、部下に尋ねる。



「一応の報告は上がっています」


先ほどとは別の仕官が報告書と取り出した。



「昨夜は最高速力38ノットを記録しています」


「38ノット・・・」



凄まじい速度に参謀長が絶句する。



本来、「大和」の最高速力は27ノットである。



動力機関が燃え尽きるほどの限界を目指して29.5ノットとなっている。




ちなみに、1ノット=1.852キロである。






「さらに、27ノットを超えている間は燃料が全く減っていないとの報告も上がってきています」



「う〜む・・・」



仕官のさらなる言葉を聞いた司令長官が思わず唸る。





本来、巨大な艦になるほど燃費が悪くなっていく。


この時代、世界最大の軍艦である「大和」は燃費が悪い事でも有名である。



それが燃費0だったというのだ。


驚かずには居られないだろう。
















(どいうことだろう?)









バテバテになっていながらも、大和は自分の中の会話をしっかり聞いていた。







(速力38ノット?27ノットを超えた場合の燃費が0?)






大和は足りない頭で懸命に考える。









(11ノットオーバーか・・・僕が長距離を走った時と同じぐらいだな)







11ノット≒20キロ。



大和、かなり見栄を張っている。








(ということはあれか?僕が走っている気持ちでいる場合はその分が「大和」の速力に加算される?)






大和は一つの仮定に辿り着いた。








(そう考えると、今の速力が27ノットだっていうのもわかるな〜)








今の大和は自分で走っていない。



つまり「大和」そのものの速力しか出ていないのだ。








(んじゃ燃費は?)







大和は次の問題について考え出す。



意外と知性的だ。









(27ノットを超える場合、燃費が0・・・)








(つまり僕が走っている時は燃費が0ということか?)






あっさりと適当な仮定を立ててみたりする。








(ちょっと試してみようかな)






そう考えた大和は歩いてみた。




もちろんイメージである。










「速力再び30ノットに上昇しました」



仕官が落ち着いて報告を出す。


もはや慣れたのであろう。



「ということは燃費も0なわけか」


司令長官も落ち着いたものだ。






(速度も勝手に決まっている・・・私は何のためにいるのだろうか・・・)



割と御気楽気味な他の乗組員と違って、高柳艦長だけは自分の存在意義について悩んでいたりもする。



幸の薄そうな人物だ。














(3ノットか。少し早足だったからこんなもんかな)







自分の仮説が正しそうな気がしてきた大和は満足していた。












(でもこれは凄いよ!!歩くだけで30ノット出て、燃費0!!)





(巡航速度が30ノットで、瞬間ならきっと40ノットオバー。しかも燃費0!!)








(これで大和も大活躍だ〜!!!)










大和大興奮であった。












(待てよ?ということはひょっとして・・・)







大和はなにやら企んでいた。















「主砲塔が旋回しています!!」




「副砲も勝手に動いています!!」




「機銃もです!!止まりません!!」








突如動き出した火器に、「大和」内部ではあちこちで悲鳴が上がっていた。



今までは速度と舵だけだったのが、今度は武装までである。








「一体この艦はどうなっているんだ・・・」



さすがの司令長官も頭を抱えている。




「呪われているとしか思えません・・・」



参謀長まで頭を抱えていた。














(わ〜い!火器まで思い通りに動かせるんだ!!)










そんな内部での混乱などお構いなく、大和は大喜びであった。













(これで管制射撃が出来るんだね!)










管制射撃とは、複数の火器を一箇所で制御することである。



こうすることで、効率的な攻撃が行えるのだ。



通常はレーダーなどを使って行う。














(まさしく僕は大和なんだ〜〜〜!!!)









今さらな結論であった。


























それからさらに数時間。






「大和」の先のほうに大艦隊が見え始めた。









「前方24マイルに第一機動部隊と思われる艦隊を発見しました」




艦橋に見張り員からの連絡が入る。





第一機動部隊とは空母四隻(赤城、加賀、飛龍、蒼龍)を擁し、世界最強と謳われた艦隊である。


指揮官の名前を取って南雲艦隊と呼ばれることもある。





ちなみに1マイル=1.609キロである。





「結局この艦は第一機動部隊と合流したかったのか・・」



誰に言うわけでもなく、司令長官が呟いた。




「艦が望んだということでしょうか?」


司令長官の呟きを聞きとめた参謀長が訊ねる。



「そうとしか考えられないだろ」


司令長官はそう答えるが、確信があるわけではない。


確信など持てるはずがないだろう。



「何のためでしょうか?」



「それはわからんよ。この艦に聞いてくれ」



答えのでるはずもないやり取りはそこでしゅうりょうした。





その頃大和は・・・









(おお〜〜!!!空母が四隻も〜〜!!!凄い〜!!凄すぎる〜〜!!!)









・・・何も考えず大興奮であった。

















「あれは・・・「大和」じゃないか」



その頃、第一機動部隊旗艦「赤城」の艦橋で双眼鏡を覗いていた南雲中将が驚きの声を上げた。




「大和」は本隊を率いて遥か後方にいるはずなのだ。


それが僅か後方に、それも単艦で姿を現したのだ。


驚くなという方が無理であろう。




南雲だけではない。


「大和」を発見した第一機動部隊の乗組員全てが驚きの声を上げていた。







そんな騒ぎの中、大和君は何も考えずに第一機動部隊に突入する。










(おわっと!・・・・危ねぇ!・・・のわっ!)











辛うじて他の艦を避け、四隻の空母の中間に位置し、速度を落とす。








「空母群の中央に位置しただと?何か意味があるのか?」



司令長官が「大和」の位置取りに考えを巡らす。




ちなみに、この司令長官。


大和がいまだに名前を認識していないため、名前が出て来ない。


かわいそうな人物である。
















(う〜ん!!この位置が一番良く空母が見えるな〜)










案の定、大和は何も考えていなかった。










そんな時、「赤城」から発光信号が送られてきた。



敵に位置を知られないように無線封鎖をしているため、発光信号ぐらいでしかやり取りが出来ないの
だ。










(発光信号?・・・う〜ん・・・読めないや)






大和は発光信号が読めなかった。



しょせんこの程度の知識である。












「貴艦ナゼ此処ニアリヤ」






もちろん、「大和」の乗組員には読み取れている。




しばらく経った後、司令長官からの命令で返信が行われた。





「本艦此レヨリ貴艦隊ト行動ヲ共ニスル。指揮ハ貴艦ガ続行セヨ」




「大和」が第一機動部隊と行動を共にしようとしていると判断しての返信であった。












<次回予告>


ついに暴かれた「大和」の秘密!


「大和」は果たして第一機動部隊を救えるのか!


「大和」を翻弄する歴史という名の大波!





次回


「愉快な大和君、戦場を逝く」


「第三話! 激闘!ミッドウェイ!」



太平洋の歴史がまた1ページ。








次回予告は真っ赤な嘘です(笑)















〜〜〜〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

というわけで、震電さんからのリクエストをお送りいたしました。



ちょっと「大和」の能力を整理します。


1.大和君は自分の意思で動いているときは、大和君の速度が「大和」に加算されます。

2.1の間は燃料消費が0です。

3.大和君の意思で火器を動かせる。

4.大和=船魂状態のやまと  「大和」=戦艦大和  (あれ?能力じゃないや(汗))



文中の管制射撃の説明はかなり適当です。適当な説明が重い浮かばなかったもので。


誰かこんな説明があるよ!と教えて頂ければ改変します。


出来るだけ分かりやすい文でお願いします。





それでは次回お会い致しましょう。










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