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「激闘!ミッドウェイ!弐」 「ビンゴだぜ!空母が四隻だ!!」 「なんだあの真ん中の戦艦は!馬鹿みたいにデカイぞ!」 来襲したドートンレス爆撃機の機内で様々な会話が飛び交う。 ちなみにこの時、第一機動部隊には三隻の戦艦が存在していた。 名前を上げるなら「霧島」、「榛名」、そして御存知「大和」である。 このうち「霧島」と「榛名」は通常クラスの戦艦のため、巨大戦艦と言えば「大和」のことだろう。 『よし、全機空母を狙え!』 無線を通じて、攻撃隊長からの指示が出る。 今次大戦における空母の重要さを考えれば当然の指示だろう。 だが、時として戦争は理性だけでは動かない。 いや、理性で動く事の方が少ないかもしれない。 「空母を狙えだって!ふざけるな!」 「あんなデカイ獲物をみすみす見逃せっていうのかよ!」 多くの機からそんな不満が噴出した。 大物を狙いたがると言えば日本軍、そういったイメージがある。 確かに日本軍は大物を狙いたがる傾向にある。 だが、同種の傾向は他国の軍にも少なからず存在するのだ。 見たこともないような大型戦艦が目の前にいる。 空母を差し置いて、その戦艦を狙いたがる機が多数出てもなんら不思議ではなかった。 攻撃隊長自身にもそのような感情があるため、強くは阻止しなかった。 結局この時、ドートンレス爆撃機30機のうち半数の15機が「大和」を目掛けて攻撃を仕掛けようと していた。 さて、そんな事とは露知らない大和はどうしていたのか。 ドン! ドドン!! (どうだ〜!!喰らえ〜対空砲!) 対空砲を撃っていた。 「ええい!まだ射程外だと言うのになぜ撃つんだ!!」 「大和」内部で相変わらず参謀長が怒鳴り声を上げている。 良く見ると、第一機動部隊で対空砲を打ち上げているのは「大和」だけであった。 どうやら大和は無駄弾を撃っていたようだ。 どうしようもない奴である。 (あれ?どうしてみんな撃たないんだ?) 大和もようやく周囲の状況に気がつく。 (ひょっとして・・・射程外?) ひょっとしなくても射程外である。 (・・・こりゃまた失礼しました〜) 第一機動部隊の命運が掛かっているにも関わらず、いまいちシリアスになり切れない大和であった。 そんな大和はさておき、第一機動部隊の他の人間は死力を尽くしてドートンレス阻止に動く。 先鋒を切るのはやはり零戦であった。 しかし、その数は余りに少なかった。 「大和」の対空砲を見て、上空へ上がっていった零戦であったが、迎撃に動ける高度にいたのは僅かに 三機。 他の機はいまだ上昇中であり、間に合わない。 それでも僅か三機の零戦は懸命にドートンレスに食い下がった。 護衛の戦闘機を随伴していないとはいえ、ドートンレス五機を撃墜したのだ。 しかし、日本に「大和魂」あらばアメリカにも「フロンティア・スピリッツ(開拓者魂)」ありき。 残り25機のドートンレス爆撃機は臆する事無く、急降下を開始した。 次にドートンレスに襲い掛かったのは中空にいた零戦であった。 急降下を開始したドートンレスへの射撃が行えるのは、水平軸と急降下軸の交わる一点のみ。 時間にして一秒にも満たないような僅かな時間。 いかに神業揃いと言われる第一機動部隊のパイロット達とは言え、そうそう命中させられるものでは ない。 それでも二機を撃墜したのは見事と言うほかないだろう。 23機となったド−トンレス爆撃機は四隻の空母(「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」)に三機づつ、 そして「大和」に対しては十一機が向った。 これを防ぐのはもはや艦隊から打ち上げられる対空砲のみである。 そもそも対空砲という物は、「下手な対空砲数撃っても当たらない、上手な対空砲数撃ちゃ当たる」と 言われるように命中率は極めて低い。 主な目的は爆風などによって、敵の狙いを逸らすことにあると言ってもいいだろう。 ドーン!! ドドーン! ダダダダダ!! そして、ついに第一機動部隊の全艦から対空砲が打ち上げられ始めた。 それと同時に、回避行動も開始する。 もちろん、待ってましたとばかりに大和も参加している。 (四隻の空母を狙ってくるだろうから、空母の上空に向って撃たないとね) およそ半数が自分を狙っている事には気付いていなかった。 ちなみに、大和が狙いを勝手につけているため、対空砲要員は暇を持て余している。 「こんな大事な時に何も出来ないなんて・・・俺たちは何のために厳しい訓練をしてきたんだ・・・」 ・・・少し可哀想な気もする。 「何としても空母を守るんだ!」 「大和」内部で司令長官が声を上げる。 「今の状況で爆弾を一発でも喰らったら・・・終わりだぞ・・・」 彼の頭の中では多数の爆弾、魚雷が誘爆していく状況が浮かんでいた。 「敵機、本艦に向って来ます!」 そんな時、見張り員からの報告が入る。 「何!」 報告を聞いた司令長官が双眼鏡で眺めると10を超えるドートンレスが「大和」に向ってきていた。 (あれ〜?なんか敵機の半分が纏まっているな〜) (ま、いっか。とにかく空母の上空を守らなくちゃ!) 大和はまだ気付いていなかった。 「対空砲、依然空母上空へ向っています!」 「動かせません!!」 見張り員の声が絶叫へと変わる。 「何!それでは「大和」が・・・」 報告を受けた参謀長が絶句した。 確かに空母は大事だが、敵機が自艦に向って来ている状態なのだ。 まずは自艦に向って来る敵機を追い払うのが先決のはずだ。 しかも、「大和」はただの艦ではない。 連合艦隊の旗艦なのだ。 「大和」の行動は常軌を逸している、そうとしか見えない。 実際は大和がただ気付いていないだけなのだが。 「この艦は自分を犠牲にしてまで空母を守ろうというのか・・・」 司令長官は物凄く大和を買い被っていた。 その間にもドートンレスは重力を生かしてそれぞれの目標に対し、一気に降下して来ている。 (あ、あれれ?なんか真っ直ぐ僕に向って来てるぞ・・・) ここに至ってようやく大和が異常にに気が付いた。 (ひょっとして・・・僕狙われてる〜〜!!??) 相変わらずの鈍さであった。 (あわわわわ!!敵が来る〜!!爆弾持って敵が来る〜〜!!) 案の定大和はパニックに陥った。 今まで堂々と航行していたのが、迷走へと変わり、左右へ転舵を繰り返す。 「「大和」、回避行動を始めました」 見張り員の目には「大和」の迷走が回避行動に移ったようだ。 「良き解釈はイバラの道を薔薇の楽園へと変える」 実にピッタリな諺であった。 (苦労して戦艦の艦長になったのに・・・私の存在とは何なんだ・・・) 本来舵を取るはずの高柳艦長は心の中で愚痴っている。 可哀想と言うよりも憐れであった。 「対空砲の操縦が戻りました!」 大和がパニックに陥ったことで、対空砲を操作している余裕がなくなったのだ。 「よし!早速敵機へ・・・」 「待て!」 目標を「大和」に迫る敵機に向けるよう、指示しようとした参謀長を司令長官が止める。 「あんな爆弾が当たったところで「大和」はびくともしん!」 「大和」の主要部分の装甲は馬鹿みたく厚い。 急降下爆撃に使う小型の爆弾ではびくともしないだろう。 もっとも、被害が全然出ないわけではない。 装甲のない物や場所も多いのだ。 ただ、艦にとって致命傷となることはない。 そう言う意味だ。 「ここは「大和」の意志に従い対空砲は空母上空へ向け続けろ!」 司令長官の命令を受け、大和の対空砲は空母上空へと向けられ続けた。 (そんな意志ないよ〜!!とにかくあの敵機を追い払ってよ〜!!!) 大和は半泣きになりながら文句をぶつけていた。 筋金入りの情けなさである。 「しかし・・・「大和」の機動性はこんなに良かったか?」 ふと、不思議に思った司令長官が詳しいであろう高柳艦長に尋ねる。 「いいえ。この機動性は本来の数値の倍以上です」 さっきまで愚痴っていた人物とは思えないほどの切り替えの早さだ。 艦の機動性。 それは多くの場合、舵を切ってから実際に艦が動き始めるまでの時間や、円を描いた時の半径で比べ られる。 「大和」は特に前者で劣っているとされる。 舵が効き始めるまで一分を超えるのだ。 巨大な艦では慣性が大きいため、仕方ないとも言える。 ところが、今の「大和」は数秒、十数秒ごとに転舵を繰り返しているのだ。 その半径も極めて小さい。 ちなみにこの事実・・・ (わ〜〜!!爆弾が来る〜〜〜!!) ・・・パニック状態の大和は気がついていない。 とにもかくにも、ドートンレスによる爆撃が始まった。 ここまで、艦隊からの対空砲によって「飛龍」と「赤城」へ向ったうちの一機づつが撃墜されている。 残り21機。 最初の一発は「加賀」へ行われた。 だが「加賀」の懸命の回避が功を奏し、「加賀」の左舷へ虚しく水柱を上げるにとどまった。 もっとも、今の大和にそんなことを気にする余裕は無い。 「大和」には空母の四倍近い11機が向って来ているのだ。 対空砲の援護もない。 (ちくしょ〜〜!!来るなら来いってんだ!!) かなり自棄が入っていた。 もちろんドートンレス爆撃機に遠慮なんてものはない。 我先にと「大和」を目指して爆弾を落としていく。 「頼むぞ「大和」」 司令長官は艦橋で祈っていた。 それは参謀長を含めた全ての人間の祈りでもあった。 (俺の仕事なのに・・・) いや、高柳艦長だけは再び愚痴っていた。 舵が大和が勝手に動かしている以上、他にやる事が無いのだ。 (まずは右か!!) 大和が左へと針路を変える。 回避は成功し、爆弾は「大和」の右舷へ水柱を上げた。 (次は左か!!) (今後は前!!) (後ろにも来るの!!) 大和は右への転舵、急減速、急加速を使って懸命の回避を行う。 何時の間にか急減速や急加速まで身につけているようだ。 もっとも、急減速、急加速と言っても人間のようにはいかない。 通常の艦に比べれば、の事である。 「なんという機動性だ・・・これが「大和」の真の能力だというのか・・・」 通常の艦に比べて圧倒的なまでの機動性を見せ付けられ艦橋にいた人間は呆然としていた。 おかげで、急加速や急減速の時に転びそうになっているのは秘密である。 (な、なんだ・・・僕もやれば出来るじゃん!!) 立て続けに回避に成功した大和は少し余裕が持てるようになっていた。 しかし敵機はまだ残っており、投弾が続く。 (そんな攻撃じゃ僕には当たらないよ!!) (見える!) (そこ!!) (なんと〜!!!) ・・・余裕を持ちすぎている感もある。 ニュータイプに憧れでもあるのだろうか? (ふっ、余裕!余裕!) ズガーン!! そんな時、大和の余裕をぶち壊すかのような音が戦場に響き渡った。 (な、なんだ!?) 大和は慌てて音の発生源へと注意を向ける。 (あぁ・・・空母が・・・) そこには被弾した「加賀」の姿があった。 艦首部分から煙をもうもうと上げている。 だが、呆然としている暇は無かった。 ここは戦場。 そして、「大和」への攻撃はまだ続いているのだ。 (!!??しまった!!避け切れない!!) 再び注意を上空に向けたときには遅かった。 ガガーン!! 先ほどとは違い、今度は衝撃までもが「大和」を襲う。 「大和」被弾の瞬間であった。 「被害状況知らせ!!」 「大和」の被弾を受け、艦橋が急に忙しさを増す。 「第一砲塔被弾!」 「戦闘に支障ありません!!」 「詳しい被害状況は現在調査中です!」 爆弾は第一砲塔(一番前の主砲)を直撃した。 戦艦の主な攻撃手段であるため、主砲塔というのは艦の中でも装甲が厚い。 そのため被害は軽微で済んだようだ。 (痛てぇじゃねえか!ボケ〜!!!!) 余程頭に来たのか言葉遣いがかなり悪くなっている。 大和は再び対空砲の制御を握ると、残りの敵機に向け攻撃を開始する。 怒りのためか、はたまた全ての対空砲が一つの意志で動いているからなのか。 「大和」の対空砲は極めて効率よく弾幕を張っていく。 (へっへっへ!!どんなもんだ!思い知ったか!!) 残っていた二機のドートンレス爆撃機を撃墜した大和は得意げになっていた。 本来命中率の低い対空砲で二機とも落とすとは・・・怒りの力は恐ろしい。 (あ、そうだ!!空母は!?) とりあえずの危機が去った大和は慌てて空母の様子を探る。 すると、「加賀」から立ち上っている煙はその量を減らしていた。 (よ、よかった〜。なんとか誘爆は防げたんだ) 大和も胸を撫で下ろした。 <次回予告> 最初の危機は去った。 だが戦いはまだ終わっていない。 開始される航空戦。 そこで大和は何を見るのか。 深まる大和の苦悩。 次回 「愉快な大和君、戦場を逝く」 「第四話 激闘!ミッドウェイ!参」 太平洋の歴史がまた1ページ。 「僕は・・・まさか・・・」 次回予告はかなり嘘です(笑) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 というわけで、震電さんからのリクエスト「愉快な大和君、戦場を逝く 第四話」をお送りしました。 長くなったな〜。いや、小説なら普通なんですけど、リクエスト小説は短めで行く予定なので・・・ まあいいか。感想を始めてもらったことだしね☆ 今作で「大和」の新たな能力が明かされました。 ぶっちゃけ、小回りが効くということです。 後は・・・「大和」が喰らうと大和も痛いということぐらいですか・・。 多分他の能力はありません。 それでは次回お会いしましょう。 |
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