「激闘!ミッドウェイ!参」

















「なんとか防いだようだな・・・」



大和が胸を撫で下ろしている頃、「大和」艦橋でも司令長官が胸を撫で下ろしていた。




空母の重要性を日本で誰よりも認識しているのは彼なのだ。


名前は・・・まだ出ない。





「「大和」のおかげでしょうか?」


「そうだな。「大和」がいなければ空母の被害はもっと大きかっただろう」


どこか納得いかない参謀長の言葉に、司令長官は頷く。



参謀長は勝手に動く「大和」が気に入らないのだろう。

















(ふっふ〜ん♪もっと褒めてもいいよ〜)
















自分の行動が評価された大和は鼻高々だ。


彼らの名前に関してはなんら気にしていない。









「「大和」は空母を救うために此処に来た。そうとしか考えられない」


艦橋から外を見下ろしながら司令長官が呟く。


視線の先には、何事も無かったかのように悠々と海を切り裂いて航行している「大和」があった。





「だが、そんなことが出来る「大和」とは一体なんなのだ・・・」


それは「大和」乗組員全ての疑問であった。





乗組員全ての疑問を、大和は・・・






















(おお〜!航空隊の出撃だ〜!!)

















聞いちゃいなかった。








「大和」の事情など露知らず、被害を最小限に抑えることに成功した第一機動部隊は、既に次の行動
に移っている。


その行動とは、もちろん敵空母への反撃である。





反撃の矛となる航空機は、さきほどから兵装転換を終え甲板上に並んでいる。


敵機による爆撃が終わった直後に、敵艦隊の正確な位置の報告が入っている。


後はその敵艦隊に向け、航空機を放つだけだ。



そのため、四隻の空母は次々に針路を風上へと向けている。









空母から航空機を飛び立たせる場合、ある程度の向かい風が必要となる。


空母では甲板の長さが大きく制限されるため、向かい風を利用しないと滑走距離が足りないのだ。


しかし、自然な状態で発艦に必要な向かい風が吹くことはまずない。



そこで風上へ針路を向けるのだ。


1ノットの速さで風上に向えば、甲板上では1ノットの向かい風が吹いているのと同じになる。


そうやって発生させる「速力+向かい風」を合成風力と呼ぶ。










必要な合成風力を得た四隻の空母から、次々と矢のように航空機が放たれた。



その数は四隻合計で100機近い。


数、錬度共にこの時点では最強と呼ぶに相応しい攻撃隊である。




















(頑張れよ〜!!)


















大和が浮かれながら見送るのも仕方の無いことであった。








大和に、そして第一機動部隊の乗組員全てに見送られて攻撃隊が飛び立った後は、各空母から零戦が
上がっていく。






敵の攻撃隊が来たということは、常識的に考えれば第二波攻撃もある。


空母戦では、空中での集結時間などの都合により、およそ半数ずつの攻撃隊を二度に分けて発艦させる
のだ。


そのため第一波攻撃があれば、第二波攻撃があるのが普通である。






それに備えて、零戦を多めに飛ばしておくのだ。


























(来るなら来〜い!この大和様が打ち砕いてくれるわ〜!!)




















大和はまだ調子に乗っていた。





準備運動のつもりか、主砲塔を右に左に動かしている。


これまた、本来の「大和」を上回る素早さだ。


どうやら機動性だけでなく、機敏さ全てが上がっているようだ。



そのため、主砲塔要員が目を回しかけているのだが、大和は気付いていない。





余談ではあるが、対空戦闘で主砲は使わない。


つまり、主砲塔要員の犠牲は完全に無駄である。







充分な数の零戦が上がり、先ほどの攻撃により油断も消えうせている。


いつ敵機が襲ってきても大丈夫。



そんな体勢は整っていた。


















だが・・・

























(・・・来ない・・・)



















いつまで待っても敵機は来なかった。


















(お〜い!来てくれないと僕が暇じゃないか〜!!)




















暇な余り不謹慎な考えまで抱いていた。






来るはずの敵機はどこに行ったのか?


嘘のような本当の話、彼らは迷っていたのだ。



この時期、米空母の搭乗員達の錬度は総じて低い。


実戦経験のある者が圧倒的に少なかったのだ。


そのため、日本空母まで辿り着けない機が続出していた。




しかし、知識の少ない大和はそのことを知らなかった。


そのため、待ちぼうけ状態になっているのだ。








「攻撃隊より通信が入りました」


大和が暇だとごねている頃、「大和」は攻撃隊からの通信を受け取っていた。


司令長官を始めとする艦橋員達に期待に満ちた緊張が走る。



「敵ヨークタウン級空母一隻撃沈確実、同じくヨークタウン級空母一隻に魚雷1、爆弾3発命中との
ことです」


その報告に艦橋が沸く。



100機弱の攻撃隊であることを考えれば充分な戦果であった。




「これでこの戦いは勝ちだな」


司令長官も一息つく。



なお、当然のことながら「この戦い」とは「対米戦」を指さない。


「ミッドウェイ海戦」に限ってのことである。


彼の頭の中には既に次の作戦が練られているのだ。






「なお、敵艦隊にはいまだ行動可能な空母が一隻存在するそうです」


続いて行なわれた報告に今度は一同驚きを隠せない。



今回、米海軍が出してくる空母は多くて二隻。


それが彼らの見解だったのだ。




三隻目の空母は少し前の戦いで傷ついている。


それをこんな短期間に修復して来るとは思いも寄らなかったのだ。



墨俣の一夜城を見せられた斎藤龍興のようなものである。




「これが米国の底力なのか・・・」


米国の恐ろしさを知っていると思っていた司令長官は、今更ながら背筋が凍り思いであった。
























(ばんざ〜い!ばんざ〜い!ミッドウェイ海戦勝利だ〜!!)





















元々三隻いることを知っていた大和は艦橋の様子など気にせず大喜びだ。




多少戦史をかじった者であれば、誰もが憧れる「ミッドウェイ海戦」の改変に成功したのだ。


喜ばずには居られないだろう。








さて、ここで攻撃隊がどのような行動を行ったのかを話しておこう。




偵察機からの報告にあった場所へ向った彼らは一隻の空母(ヨークタウン)を発見することに成功
した。




敵艦隊は当然の如く戦闘機を飛ばしていたが、攻撃隊の護衛に付いていた護衛の零戦27機の前に一蹴
された。



数で零戦が上回っていたことや、この時期の両者の技量を考えれば当然の結果であろう。




敵戦闘機の脅威から逃れた攻撃機は上下に別れ、空母を目標に攻撃を開始した。


上からは急降下爆撃機、下からは雷撃機による同時攻撃である。


敵艦隊からも懸命に対空砲が打ち上げられるが、この攻撃から逃れることなど出来なかった。



敵空母は早々に被雷し、速力が落ちたところにさらに爆撃、雷撃を受けた。


結果、爆弾6発、魚雷4発を受けた敵空母は誰が見ても助からない状態になったのだ。




この時、攻撃隊には未だ攻撃を行っていない機体が爆撃機、雷撃機ともに12機づつ残っていた。



残った彼らは空母以外の艦を狙おうとも考えたが、航続距離に余裕があったこともあり他の空母を探
す事を選んだのだ。



敵の攻撃規模(連合艦隊が発見したのは71機)から考えて、敵空母が一隻のはずがなかった。


必ず近くに他の空母がいると考えたのだ。




しばらくして、周囲を探していた一機の零戦が別の空母二隻(エンタープライズ、ホーネット)を含
む敵艦隊の発見に成功した。


攻撃可能な機体数から考えて、彼らは狙いを一隻(エンタープライズ)にしぼって攻撃を行ない、魚
雷1発、爆撃3発を命中させた。



攻撃隊の被害は零戦2、爆撃機4、雷撃機2であった。























(・・・でもな〜・・・なんだかな・・・)






















先ほどまで大喜びをしていた大和は、何か釈然としないものを感じていた。








しかし大和が何を考えていようと時間は進み、第一機動部隊からは敵艦隊に止めを差すべく第二次攻撃
隊が発艦していく。



今回は零戦を多めに残したため、およそ80機の編成となっている。




















(頑張れよ〜)

















大和は意味深に悩んでいたことをすっかり忘れ、声援を送っていた。




変わり身の早さは天才的である。



案外ミーハーなのかもしれない。







第二次攻撃隊を送り出してしばらくすると、第一次攻撃隊が帰還してきた。


もちろんこの間、大和は何もしていない。



帰還してくる攻撃隊の中には、敵艦隊からの対空砲を受けたり、敵戦闘機からの攻撃を受け、傷つい
ている機体も見られる。





















(良くやってくれた!君たちこそ英雄だ!!)



















大和はちょっぴり司令長官気分だった。







そんな大和を尻目に第一次攻撃隊が次々と収容されていく。


この後、修理できる機体は修理して再び使うのだ。


敵艦隊への止めやミッドウェイ島への再攻撃など、航空機のやることはまだまだある。





四隻の空母では収容に、修理、攻撃の準備などで大忙しである。

























(大変そうだな〜・・・それに引き換え僕は暇だよ・・・)




















大和が空母を羨ましそうに眺めている。




空母が忙しいとは言え、並んで航行しているだけの「大和」ではやることがない。




出番があると言えばミッドウェイ島占領の時になるのだが、何せ攻略部隊は依然はるか後方にある。


というよりも「大和」が勝手に前線に来ただけなのだが。




そんなわけで、今の「大和」はやる事が全くないのだ。




平穏が一番なのだが、大和は不満らしい。





自分が中心でないと気がすまない。



まるで子供であった。


























(敵機ももうこないだろうしな〜)




















敵艦隊は既に空母一隻が沈み、一隻が被弾している。


戦闘に使える空母は残り一隻である。



それに対してこちらの空母は四隻。


常識的に考えれば撤退を始めているだろう。




米海軍は決して臆病ではないが、勝ち目の無い戦いを続けるほど馬鹿ではない。


引き際ぐらいはわきまえている。



























(いっそのこと敵艦隊でも追いかけようかな〜。僕の方が早いし)


















大和はなかなかにチャレンジ精神溢れていた。





確かに巡航速度で言えば、今の「大和」は世界最速であろう。



巡航速度とは、航行する上で一番効率の良い速度のことである。


艦の速度が早すぎても遅すぎても燃料消費は跳ね上がる。




そう考えると、大和が走れば燃料消費が0になる今の「大和」の巡航速度は27ノット以上という事
になる。



この時代の軍艦の巡航速度が平均15ノット前後であることを考えれば脅威のスピードと言える。




もっとも、撤退する敵艦隊が巡航速度とは考えにくいため単純には比較できない。


























(無理だよな〜。航空機の方が早いし、あんまり走ると疲れるし・・・)




















今更ではあるが大和はめんどくさがりでもあった。





チャレンジ精神溢れるめんどくさがり。


早い話が「口だけ男」のような気もするが、当然気にしてはいけない。























(ほんと、やることないな〜)



















一応言っておくが、いまだ戦闘中であり、空母だけでなく、他の艦でもやることは色々とある。


暇を持て余しているのは大和くらいであろう。























(僕は・・・まさか・・・)























突如大和は何かに思い当ったようだ。
























(役立たずなのか〜〜!!??)






















最初の危機を乗り切った以上、もう居なくてもいい。



間違った意見ではなかった。























(あ〜!!!!暇だ!!暇だ!!!)




















自分が役立たずに成り掛けているのを感じた大和は完全に癇癪を起こしていた。



我侭全開である。






















(暇なんだよ〜〜〜〜〜〜!!!!!!)



















「だ、誰だ!戦場で暇なんて言っているのは!!」




大和の叫びに対して、辺りを見回しながら反応を見せる人物がいた。





















(え??僕の声が聞こえるの!?)


















思いもしなかった反応に、大和が驚愕の表情を浮かべた。




























<次回予告>


現れた大和の理解者!


大和は彼に何を望むのか?


彼は大和に何を望むのか?



そして連合艦隊の行く末は?







次回





「愉快な大和君戦場を行く」





「第六話 ミッドウェイ占領」





太平洋の歴史がまた1ページ。








「大和!行きま〜す!!」




















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


というわけで、実験空母「蔵王」さんからのリクエスト「愉快な大和君、戦場を逝く 第五話」を
お送りしました。



日本の攻撃隊が強すぎるぞ〜とお思いの方もおられるでしょうが、珊瑚海海戦(ミッドウェイ海戦の
前の戦い)や双方の錬度を考えれば、こんなものでしょう。


甘すぎるかも知れないと思うぐらいです。




さて、大和の言葉を聞いたのは誰なんでしょうか(笑)



それは次回のお楽しみ〜☆



それでは次回お会いしましょう。









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