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占領!ミッドウェイ! 「だ、誰だ!戦場で暇だなんて言ってるのは!!」 艦橋に怒鳴り声が響く。 「ど、どうしたんだ?高柳君」 突然怒鳴り声を上げた高柳艦長に驚きつつ、司令長官が訊ねる。 「も、申し訳ありません。暇だと叫ぶ声が聞こえたのでつい・・・」 高柳艦長がやや恐縮しながら答えた。 「暇だと言う声??そんな声聞こえなかったが?」 「えっ?」 本当に不思議そうにしている司令長官の様子からは嘘を言っているとは思えない。 しかし、自分には確かに聞こえたのだ。 高柳艦長の疑惑が深まる。 「皆は聞こえたか?」 司令長官はそう言って艦橋にいた皆を見回すが、皆首を横に振るばかりだった。 「そ、そんな・・・確かに・・・」 思いも寄らない展開に高柳艦長も困惑を隠せない。 「疲れてるんじゃないのかね?」 「は、はあ・・・」 (確かに最近ストレスが溜まっているが・・・) もちろん、「大和」が勝手に動くせいである。 (え??僕の声が聞こえるの!?) 「またか!!」 再び聞こえた声に高柳艦長が再び声を上げる。 「今度はどうしたというんだ?高柳君」 またか。 司令長官の言葉には、そんな言外の意志が感じられた。 「また声が・・・」 「・・・してない。やはり疲れているのではないかね?」 高柳艦長が周囲を見回すと、艦橋にいた全員が自分を哀れんだ様に見ていた。 (やはり私はどこかおかしいのか〜!!) 高柳艦長の哀れな心の叫びであった。 (ちょっと!人の話を聞いてよ!) 自分のせいで高柳艦長が苦境に陥っているのだが、気にする大和ではなかった。 (え〜と・・・呼ばれ方からして高柳艦長だよね?) 大和は自分の声が聞こえているであろう人物を判別できたようだ。 (また声が・・・) 高柳艦長もしっかりと声を聞き取っているようだ。 (いや、きっとこれも疲れているせいだな。聞こえないことにしておこう) しかし、これ以上変人扱いされるのはごめんらしく、聞こえないふりを決め込んでいた。 (お〜い!聞こえているなら返事してくれ〜!!) 一人が寂しかったのか、意外に大和も真剣だ。 (聞こえない、聞こえない・・・) こちらも真剣だった。 反応したら人格を否定されかねないのだ。 大和VS高柳艦長。 どちらも引けぬ、熾烈で間抜けな戦いであった。 (お〜い!お〜い!高柳艦長返信せよ!) (聞こえない、聞こえない・・・) (こら!聞け!) (反応したら負けだ・・・) 何が負けかはわからない。 (シクシク・・・反応してよ・・・) 今度は泣き落としだ。 (私に泣き落としはきかんぞ・・・) しかも高柳艦長に読まれていた。 (ちくしょ〜!!返事しないと空母を主砲で沈めるぞ〜!!) ・・・大和はやや切れ掛かっているようだ。 結構短気なやつである。 「やめんか、ボケ!」 これにはさすがの高柳艦長も反応した。 二人は真剣そのものなのだが、なんだか漫才のような会話である。 「高柳君・・・しばらく職務から離れるか?」 事情を知らないものから見れば、異常としか思えない高柳艦長の態度に司令長官は不信感を露にして いた。 「も、申し訳ありません。しかし主砲で空母を沈めるなどと・・・」 「誰がそんな馬鹿なことを言うというんだ」 慌てて弁明するものの、余計不信感を煽った結果に終わったようだ。 高柳艦長、正真正銘ピンチである。 しかし、そんな艦長に救いの手が差し伸べられる。 (僕がするんだよ〜!!) もっとも、その手は高柳艦長からすれば跳ね除けてしまいたいような手であった。 「大変です!」 見張り員からの血相を変えた報告がなされる。 「どうした!」 敵か! 艦橋に緊張が走った。 しかし、見張り員からの報告は予想外なものであった。 「「大和」の主砲が空母に向けられました!」 「なんだと!」 報告に驚きながら、全員の目が外に向けられた。 そこには至近距離と言ってもよい位置にいる空母に向けられている主砲塔があった。 万が一発射されれば空母への命中は間違いない距離である。 そして、至近距離から発射される「大和」の砲弾に耐えられる艦など、この世に存在しない。 「どういうことだ!「大和」は空母を守るためにここに来たのではないのか!」 「大和」の理解不能な行動に、艦橋では半ばパニックが生じていた。 「くそ!あの声の仕業が!お前は誰なんだ!」 高柳艦長も辺りを気にせず、声を上げる。 (やっと僕の存在を認める気になったかい?) まるで死神か悪魔の様な言い草になっていた。 「認めてやるから名乗れ!」 大和の妙な言い方に高柳艦長のストレスも高ぶっている。 (あれ?そんなこと言っていいのかな〜) 「なんだと?」 (この艦隊の生殺与奪権は僕が握っているんだよ?) 悪役パワー全開であった。 「くっ・・・」 忌々しげに高柳艦長が吐き捨てる。 だが今空母の命運を握っているのはこの声の主に間違いないようだ。 高柳艦長には大人しく従うしかないのだ。 (なんちゃって、冗談だよ冗談) 「・・・はっ?」 大和の突然の豹変に高柳艦長が思わず間抜けな声を漏らす。 (基本的に僕はいい人だからね〜。そんな悪役っぽいことは言わないよ) 怪しいものだ。 (でも僕の声が聞こえるなんて嬉しいよ) 「・・・まあいい。貴様は誰なんだ?」 なんとか心を落ち着けた高柳艦長が改めて訊ねる。 訊ねると言っても宙に向って一人話しているだけだ。 パニックになりかけていた艦橋員も皆、変人を見るような顔で高柳艦長を眺めていた。 (くっ、気にしたら負けだ・・・) 大和と違って鈍くない高柳艦長は視線を感じ取っているが、なんとか気にしないようにしているよ うだ。 (シクシクシク・・・せっかく戦艦の艦長になったのに・・・) しかし心の中で泣いているあたり、高柳艦長の心労は溜まる一方だった。 (僕の名前はやまと。よくわからないけど、「大和」の船魂だよ) 「船魂だと?」 謎の声を認めた高柳艦長も、船魂という言葉には驚いたようだ。 (そう。だからこの艦は僕の思いのままさ〜) 「「大和」をここまで連れて来たのも貴様の仕業なのか?」 驚いた物の、意外とすんなり受け入れたようだ。 この時代、船魂というものがそれなりに信じられていたせいであろう。 (イエ〜ス、ザッツ・ライト!) なぜか英語だった。 「帝国の軍艦の船魂である貴様が英語を話すんじゃない!」 いくら海軍が陸軍に比べて自由な気風であったとは言え、さすがに日本の軍艦の船魂が英語を話すのは 気に食わないようだ。 大和にも、それぐらい考えてもらいたい物である。 (ケチ〜) さすがは我侭大和。 自分の行いを棚に上げて文句を垂れていた。 「・・・お前のようなやつがよりによって「大和」の船魂とは・・・」 帝国最大、いや世界最大の戦艦である「大和」。 まさしく連合艦隊の象徴である。 その艦の船魂が大和のようなふざけた奴だとは・・・ 帝国軍人ならずとも嘆きたくなるだろう。 (気にしない、気にしない) 大和は嫌味を言われても能天気であった。 「・・・まあいい」 高柳艦長も諦めたようだ。 いや、何を言っても無駄だと悟ったのであろう。 「とにかく貴様のおかげで空母が助かった。一応礼は言っておくぞ」 (本当は全然言いたくないけどな!) さすがは帝国軍人。 内心はともかく、外面上は礼儀正しかった。 (あ、やっぱり〜。僕も走ったりして頑張ったからね〜) そんな高柳艦長の内心に大和が気付くはずもなく、自慢たらたらに照れているだけであった。 「走った、だと?」 高柳艦長はその言葉を聞き逃さなかった。 「ではあの37ノット航行は貴様のせいか?」 戦艦の艦長にまでなった男である。 本来はきわめて優秀なのだ。 ただ大和のせいで不幸に陥りつつあるだけだ。 (う〜ん、その辺は僕もいまいちわからないんだけどね・・・) そう言ってから、大和は自分の推測に関して話し始めた。 燃料消費のこと。 自分で走った分が「大和」の速力に加算される事。 ついでに自分が射撃の全てを同時に操れることまで話した。 「なるほど。船魂と言うだけあって、艦全体を操れるのか」 (いや〜、そんな褒められると照れるな〜) 「褒めてないぞ」 まるで漫才のようなやりとりであった。 「先ほどの機動性もお前の仕業なのか?」 余りに軽い性格の大和に頭痛を覚えながらも、高柳艦長は大和の説明から抜けていたこと訊ねる。 (機動性?何のこと?) しかし、そのことに全然気付いていなかった大和は疑問に答えることなく聞き返すだけであった。 「気付いていなかったのか?」 船魂と言いながら機動性に関して知らなかった大和をやや不信に思いながらも、高柳艦長は先ほどの顛 末を説明する。 (ふ〜ん。そうだったんだ) 高柳艦長から説明を受けた大和も少し考えを巡らせた。 (あの時操舵していたのは僕だから、多分僕の能力の一つ。そう考えるのが自然だよね) 「そうか・・・貴様の能力。上手く使えばこの戦争の行方を左右しかねないな」 高柳艦長は素直にそう感じ取った。 常識を凌駕する巡航速度、最高速度。 無限の航続距離。 戦艦とは思えない機動性。 統一された射撃管制。 そして、それらを発揮するのは世界最大の戦艦である「大和」。 航空戦力の優越が確立されつつある今次大戦においても、脅威と言う他ない能力であった。 「・・・高柳君・・・」 大和との会話に熱中していた高柳艦長は、肩を叩かれてようやく司令長官が背後にいることに気が 付いた。 「あ、長官。何でしょうか?」 高柳艦長はそう答えながら、慌てて姿勢を正す。 「きみはかなり疲れているようだな。今すぐ部屋に戻りなさい」 「え?」 「もう危険は去ったようだし心配はいらんぞ。部屋で休んで来い」 先ほどから宙に向って話し掛けている高柳艦長の行動に、司令長官も気を使ったつもりなのだ。 どうやら高柳艦長の怪しさが臨海を突破したらしい。 「い、いや。私は大丈夫ですから」 いつの間にか自分がとことん怪しい奴だと思われていることに慌てた高柳艦長も懸命に言い訳を 繰り返す。 「「大和」の船魂と話をしていただけで・・・」 「船魂、ね・・・」 しかし、高柳艦長の言葉はさらなる嘲笑を買うだけであった。 いきなり船魂と話していると言われても、怪しさが増すだけなのは当然のことである。 「ほ、本当なんです!」 「わかった、わかった。分かったから自分の部屋に戻っていろ」 完全に変人扱いされ始めていた。 「お前たち、高柳君を自室へ連れていってやれ」 司令長官の言葉に何人かの参謀が動き、高柳艦長を強引に連れ出そうとする。 「ちょ、ちょっと・・・」 高柳艦長は懸命に抵抗するのだが、複数の人間にがっちりと抱え込まれているため、とても解けそう にない。 「こら!大和!!お前のせいでこうなったんだぞ!助けろ!」 思わず大和に助けを求める高柳艦長であったが、そういう行動がさらに怪しさを増しているのに気付 いていなかった。 (助けるって・・・どうやって?) 高柳艦長の危機にも御気楽さを崩さない大和。 高柳艦長は風前の灯であった。 <次回予告> 大和の言葉を聞き取ることが出来る高柳艦長。 彼は歴史を変えるキーマンと成り得るのか? その前に歴史の舞台から退場してしまうのか? 彼を救うべく大和は動く。 大和に翻弄される連合艦隊。 完全に忘れ去られている米機動部隊。 歴史は今、音を立てて変わりつつあった。 次回! 「愉快な大和君、戦場を逝く」 「第七話 ミッドウェイはどうした?」 太平洋の歴史がまた1ページ。 「これでどうだ〜!!」 あ、ミッドウェイ占領してないや(笑) 〜〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜〜〜〜〜 というわけで、遅くなりましたが「まるす」さんのリクエスト「愉快な大和君、戦場を逝く 第六話」 をお送りいたしました。 とりあえず、タイトルに嘘偽りがあったことをお詫び申し上げます。 いや、こんなにコント風で長引くとは思ってもいなかったもので・・・ それにしても高柳艦長が完全にお笑いキャラになりつつありますね(^^;) 作品全体がお笑いなので許して頂きましょう。 今作は会話を通して、大和の能力を整理出来たので読者の皆様にも大分わかりやすくなったと思いま す。 この先の「大和」の活躍もこの能力を生かして戦うこととなるでしょう。 さて、この作品は軍事関係に興味がない人にも楽しんで頂ける作品を目指して書いているわけですが、 その目標は果たされているのでしょうか? この作品を読んでいる人は多くて30人。 この作品を知らない多くの人が可哀想だな〜、と鼻高々に言えるように頑張っていきたいと思います。 まあその辺がどうであれ、こんな調子で続くんですけどね(笑) それではまた次回お会いしましょう。 |
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