愉快な大和君、戦場を逝く(異伝)









第10話 あなたも出るの? 















(んで勝手に連れて来ちゃったんだよね〜)



大和はミッドウェイからの帰り道、新たな降臨者である蔵王と出会っていた。


蔵王が宿ったのは戦艦「金剛」。


直接的な戦闘力こそ連合艦隊の戦艦の中で最低ランクにあるものの、その速度は30ノットと極めて高速な戦艦であ
る。



その「金剛」を詳しい説明も無く主力部隊から引き抜き、本土へと連れ帰って来たのだ。


全ては高柳艦長を通じて大和から事情を聞いた山本長官の強権である。



その「金剛」は現在「大和」とは別の工廠で対空砲を充実させるべく改造を受けていた。


もちろん、その道中事情はしっかりと説明されて・・・・いない。





(僕にもよくわからない事情を説明なんて出来ないしね〜)





とは大和の言い訳であった。



ちなみに、蔵王の呼び方は紛らわしくならないように金剛と呼ぶことになっていた。





(・・・でも、あの時な〜んか別の気配もあったような気がするんだけど・・・気のせいだよね)





主力部隊から分かれてというもの、大和にはそのことがずっと引っ掛かっていた。


これが大和の気のせいでなかったことは後に明らかになる。







「ようやく改装も終ったか」


改装を終え、痛みから解放された大和が色んなことに考えを巡らせていると、ドッグに久々に高柳艦長が姿を見せた。





(あ、裏切り者だ・・・)





高柳艦長の姿を見つけた大和が、思わずそんなことを呟く。


どうやら改装による痛みを早く教えてくれなかったことに対し、恨みを持っているようだ。


「随分と心外な言われようだな。貴様の言うとおり改装してやったというのに」


高柳艦長が冷静さを保ったままであった。



(こいつは基本的に子供なのだ。子供の言うことに腹を立てても仕方ないからな)


この三ヶ月で、高柳艦長は大和の本質を見抜いたようだ。


さすがに、基本的に優秀な人物である。





(痛いなんて聞いてなかったよ・・・)





「それは貴様の考えが足りなかっただけだろ」


大和の文句に対し、高柳艦長は勝ち誇ったように言った。





(うっ・・・それを言われると・・・)





それを言われてしまうと、残念ながら、大和にそれ以上言い返すことは出来なかった。



「そんなことより、新しい兵装の使い心地はどうだ?」



改装の結果、「大和」は対空砲が格段に充実していた。


改装前は12.7サンチ砲連装6基、25ミリ機銃3連装8基、13ミリ機銃連装2基であったのを
改装後は10サンチ砲連装20基、25ミリ機銃3連装92基、13ミリ機銃連装4基。


改装前の実に3倍以上の対空砲が配置されていた。


ここまでの対空砲を配置出来たのは、大和の存在でによって本来重要なバランス面に関してかなり無理出来たためこ
と、対空砲要員が不要であるためそれらを近接して配置出来たことが理由としてあった。



ちなみに対空砲を充実させるために、舷側にあった副砲4基は取り除かれている。




別面、この改装は多くの怪我人を出したことで帝国海軍史に残るものとなった。


理由は言うまでもない。


大和が痛みで暴れた時に、主砲や副砲といった兵装を矢鱈滅多に動かしたせいである。





(う〜ん・・・思った通り動いてはくれるんだけど・・・)





大和はそう言いながら、試しにとばかりに対空砲を動かす。


300を超える対空砲が一斉に左右に動く姿は、ある種滑稽であった。



「けど・・・なんだ?」


大和の中途半端な物言いに、たまらず高柳艦長が聞き返した。





(・・・数が多過ぎて上手く扱い切れない・・・)





「・・・・・」





(・・・・・)





二人の間に沈黙が流れる。



「とりあえず「金剛」の改装も終った。貴様達にはいずれ出撃命令が下るだろう」


高柳艦長は飽きれたような、情けないような、そんな口調で言い放った。





(いずれ?今すぐじゃないの?)





その言葉を聞いた大和は意外そうな声を上げた。



贔屓目抜きに考えても、自分達は大きな戦力になる。


しかも燃料もいらないという省エネ戦力なのだ。


連合艦隊にとって遊ばせておける戦力ではないはずだ。




「今すぐは無理だな」


しかし高柳艦長は何ら躊躇することなく、大和の問いかけを否定した。





(なんで?)





「連合艦隊は総力を結集してハワイ攻略に向っている」





(ハ、ハワイ〜!?)





高柳艦長の言葉に、大和はドック中に響き渡る大声を上げた。





「っつ〜!!突然大声を上げるんじゃない!」


不幸にもそれが唯一聞き取れる高柳艦長が慌てて耳を塞ぐが、少しばかり遅くかなりのダメージを受けてしまった。





(な、なんで??どうして??)





そんな高柳艦長の言葉など気にする様子も無く、大和は慌てふためいていた。





(僕がいないうちに行くことないじゃん!?)





「長官も始めはそのおつもりだった・・・」


高柳艦長が大和の言葉に対し、おもむろに話し出した。



「今の「大和」なら充分囮が勤まるだろうと・・・」





(お、囮って・・・)





思わず突っ込んでしまった大和を気にする事無く、高柳艦長は言葉を続ける。


「だが事態は変わってしまったのだ」





(変わった?なし・・・て?)





大和が尋ねようとした瞬間、高柳艦長の視線が自然と真剣味を増した。



「・・・貴様のようなやつが増えたからだ」





(え?僕のような・・・?)





予期せぬ言葉に、大和は訝しがる。





(というと・・・勇気溢れる、勤勉で真面目な人ってこと?)





「よくもまあぬけぬけとそんな言葉を・・・」


どう贔屓目に解釈しても大和には当てはまりそうにない言葉の数々に、高柳艦長のがたまらず呆れ返った。





(・・・なんか失礼な反応だな・・・)





「当然の反応だ」


不満気な大和の言葉は、一刀両断されてしまった。





(・・・まあいいや。それで?僕みたいなやつってどんなやつ?)





諦めたのか、はたまた自分でもわかっているのか。


大和はすぐさま話を元に戻した。



「推測でしかないが・・・おそらく船魂だ」





(ふ〜ん・・・)





高柳艦長の重大発言にも、大和は全く動じなかった。



「ふ〜んって・・・貴様驚かないのか?」


高柳艦長はそんな大和の態度が気に食わないようだ。





(だって僕に続いて金剛さんまでいるんだよ?他の人が出てくるのはお約束だよ)





よくわからない理論構成であった。



「相変わらずわけのわからんことを・・・」


高柳艦長も多少大和のことを理解し始めたとはいえ、さすがにここまでは理解出来なかったようだ。


出来るようにならないほうがいいのかもしれない。





(でもなんで船魂だってわかったの?誰か言葉が通じたの?)





「いや、はっきりとはわかっていない。だから推測だと言ったろ」





(?どういうこと?)





「それはな・・・」


高柳艦長が語ったのは次のようなことだった。



「大和」と「金剛」が本土へ帰還した後も、当然のようにミッドウェイ攻略作戦は続いていた。


ミッドウェイ島には主力部隊が到着し、9隻の戦艦から雨霰と砲弾が浴びせ掛けられた。


軍基地が置かれているとはいえ、さして広くないミッドウェイ島でこの砲弾の嵐から逃れる術はなく、米守備隊は壕に籠
りただ祈るのみであった。




ところが、この時連合艦隊の方にも混乱が生じていた。



艦砲射撃を始めて暫くすると、突如2隻の戦艦が混乱したように勝手に動き始めたのだ。


全く操艦は効かなくなり、乗組員及び艦隊を指揮していた司令官も艦同様混乱に陥った。




この連絡を受けた山本長官は、事態が大和出現時と似ていることから新たな船魂が現れたと考えた。


そこで2隻の戦艦の艦長及び艦隊司令官に対して、2隻の戦艦を本土へ回航するように指示を出した。



例え艦の言葉は聞こえなくとも、艦はこちらの声を聞いているという特徴に賭け、言葉で艦に指示を出すようにわざわ
ざ説明する電文をつけて、である。


この指示に受け取った方は首を傾げたものの、命令とあらばとそれを実行。


2隻の戦艦もはしばらくしてその呼びかけに従い、無事本土へと回航された。



この事態は別の場所でも起こっていた。


1つは第1機動部隊の中で、そしてもぅ1つはミッドウェイ攻略作戦に参加していた別の艦隊で起きた。


それら4隻は全て本土へと直ちに戻され、「大和」と同じく対空砲を充実させるべく改装を受けていた。


この間、艦が比較的素直に軍人の指示に従ったのは幸いであったと言うしかない。




「というわけだ。今から貴様にはその4隻と言葉が通じるのか試してもらいたい」


説明を終えた高柳艦長は、大和に此処へ来た目的を話した。





(それはいいけど・・・一気に4隻もなのね・・・)





さすがにその数は予想出来なかったらしく、大和は驚きとも諦めとも付かない口調になった。





(僕が目立たなくなっちゃうじゃないか・・・)





その原因は、言うまでもなくどうしようもない理由であった。














「どうだ?わかるか?」


暫く黙っていた大和を高柳艦長が急かす。



ドックから外に出た「大和」はそこに揃っていた3隻の軍艦と向き合った。


そしてそのまま何か考え込むように黙り込んでしまったのだ。





(1隻だけわかった)





高柳艦長に急かされ、おもむろに大和が口を開いた。



「そうか・・・1隻だけか」


全ての艦との意志の疎通が出来る事を期待していた高柳艦長が残念そうな表情になる。



やはり言葉が通じると通じないでは使いやすさに大きな差が出るのだ。



「まあ1隻だけでもわかったのならそれで良しとしよう」


それでも無いものねだりをしようとせず、現実を冷静に判断する能力を高柳艦長は持っているようだ。



「それで?どの艦ならわかるんだ?」





(右から2番目。あれって「利根」だよね!)





高柳艦長に聞かれた大和は自信満々にそう答えた。



「ん?あ、ああ。そうだが・・・」


そんな大和の態度が理解できず、高柳艦長は困惑気味だ。





(やっぱり!あの前部に纏められた主砲塔!!あれは日本では利根型しかないもんね〜)





正解を当てた大和は得意げになって語り続ける。



「いや、そういうことを聞いたんじゃなくてだな・・・」


どうやら大和との間にすれ違いがあることを感じた高柳艦長が慌てて修正をいれようとした。





(あとの2隻はちょっと僕にはわからないんだよね〜)





が、大和は全く聞いちゃいなかった。





(そういえば3隻しかいないな〜。残りの1隻はどこにいったんだ?)





「・・・わかった。今教えてやる。だからこっちの話を聞け!」


大和が全く聞いていないことを悟った高柳艦長は、改めて大和の扱いの難しさを知り頭を抱えた。





(あ、本当?んじゃ説明お願いね)





どうやら大和は自分にとって為になる言葉だけはよく聞こえるようだ。



「・・・」


このあまりの変わりように、高柳艦長は直ぐには言葉が出なかった。





「・・・とりあえず艦名から行くぞ」


間もなくして立ち直った高柳艦長はそう説明を開始した。



それでも大和の性格に慣れつつあるのか、徐々に立ち直りが早くなっているように思われる。


慣れとは偉大である。




高柳艦長の説明は長くなったため、その説明を要約する。




1隻目。


戦艦「陸奥」。


主砲        41サンチ砲連装4基


対空砲       12.7サンチ高角砲連装8基12門(連装4基8門)

(()内は改装前) 25ミリ機銃3連装22基 連装16基 単装44基 計142門(計20門)

 
艦独自の最大速力  25ノット




2隻目。


重巡洋艦「利根」。


主砲        20.3サンチ連装4基8門


対空砲       12.7サンチ高角砲連装6基12門(連装4基8門)

(()内は改装前) 25ミリ機銃連装12基 単装8基 計32門(計12門)


艦独自の最大速力  35ノット




3隻目


軽巡洋艦「神通」。


主砲        14サンチ単装砲7基7門


対空砲       25ミリ機銃3連装6基 連装6基 単装4基 計34門(無し)

(()内は改装前) 


艦独自の最大速力  35.2ノット




船体に余裕のあった「大和」程ではないとは言え、全艦とも対空砲火がかなり充実されている。



ちなみに4隻目の戦艦「伊勢」に関しては特殊な事情があり、のちほど説明するとのことであった。







「・・・というわけだ。わかったか?」


長い説明を終え、高柳艦長はさすがに疲れたようにしながらも大和の反応を待った。





(・・・とりあえず「陸奥」「利根」「神通」という艦名だけ覚えていればなんとかなるよね?)





残念ながら高柳艦長の説明の多くは無駄だった。



「・・・そうだな。それだけ覚えておいてくれ」


あまりと言えばあまりな結果に、高柳艦長には文句をいう気力も残ってはいなかった。



艦橋で一人机に突っ伏している姿を他の人が見れば哀愁を誘うことだろう。





(と、とりあえず話し掛けてみるね)





そんな哀愁漂う高柳艦長の姿を見て、さすがに罪悪感が生まれたのか、大和はなんとかフォローをしようとした。



「ああ、頼む・・・」


さすがにすぐには立ち直れないのか、顔を伏せたまま高柳艦長は力なく応える。





(え〜と・・・あ〜あ〜)





大和は3隻の方へ注意を向けると、発声練習を行なうかのように声を出した。













(改装は痛かったか〜〜!!??)









(オ〜〜(ォ〜〜)!!!)











3隻の軍艦の息はすでにバッチリであった。




















<次回予告>


次々と現れた降臨者。


個性溢れる船魂に翻弄される大和。


そして予想外の展開を見せるハワイ攻略作戦。



今太平洋の戦いは大きな転機を迎えていた。







次回!

「愉快な大和君、戦場を逝く(異伝)」


「第11話 誕生!独立遊撃艦隊!!」





皇国の歴史がまた1ページ。







「そんな名前は認めな〜い!!」



















〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜


ということで、様々な方からのリクエストを頂きました(笑)「愉快な大和君、戦場を逝く(異伝)」をお送りしました。



4人の方が新たに参加を表明してくれたので、4隻増えました(笑)


もっとも、1隻はとある事情でしばらく出ませんが。



今回はまとめて出し易い状態だったので助かりましたが、今後新たに参加者が出たらどうやって出そうか悩みますね
(汗)







それでは皆さんの参加をお待ちしております!


あ、日本艦以外でもOKですよ。





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