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9月に入り、多少弱まったとはいえいまだ日差しは強い。
かんかんと照りつける太陽の下、並ぶ2隻の巨大戦艦。
そのうちの1隻、「大和」の舷先に最初は薄く、そして最終的にははっきりと人影が現れた。
目も眩まんばかりに飾り立てられた王冠をその頭上に抱き、見るからに豪華を尽くしたと思われる赤いマントを纏う。
直立不動の姿勢と合わさり、得も言えぬ存在感を醸し出している。
そしてその人影は大きく息を吸うと、声高らかに名乗りを上げた。
(余こそは太陽王、ルイ14世である!)
愉快な大和君、戦場を逝く
第11話 遥かなる島
圧倒的な存在感を示す最強戦艦「大和」の弦先に立ち誇る、これまた勇壮さで劣らない王族、というかルイ14世の姿。
似合っていると言えば似合っているような気がしないでもないが、やはりどこか違和感を覚える。
(まあ、大和さんは外国の方でいらっしゃったんですか?)
大和を除けば、唯一その姿を見ることが出来る武蔵が驚いているのか、いないのか。
どこかのんびりとした口調で話し掛けた。
(あ、あれ?おかしいな・・・なんでこんな姿に・・・)
そんな武蔵に比べると、大和のほうが余程慌てているようだ。
自分の姿を出すはずが、ルイ14世の姿が出てきては驚かない方がおかしいだろう。
その割りに自分で名乗ったじゃないか、などと突っ込んではいけない。
(僕は日本史の人間なのにルイ14世なんて絶対おかしいよ!)
そう言う問題ではない。
(よ〜し、もう一度・・・)
そう言うと、大和は再び精神集中へと入った。
(今度こそ失敗しないようにしないと・・・)
集中する。
(自分の姿・・・自分の姿・・・)
さらに集中する。
(う〜ん、でも考えてみれば自分の姿ってよくわからないな・・・鏡なんてちゃんと見ること少ないし・・・)
少し集中が乱れた。
(まあいいや、とにかく集中しよう)
再び集中を始める。
(え〜と僕は日本人で、背はそんなに高くないな・・・)
大和は自分の容姿を口に出すことで、集中を高める。
(ちょっぴり軍事関係が好きで、常に日本の明日を憂いている・・・)
それは容姿とは関係ない。
(来たぞ・・・来たぞ・・・)
「大和」の弦先に再び人影が浮かび上がり始めた。
そしてそれは徐々にはっきりと形を為していく。
(え〜い!どうだ〜!!)
大和の気合の一言と共に、大和の弦先にはっきりと人影が現れた。
日本人らしく着物を纏い、髪は短く切り揃えられている。
どっしりとした体格ではあるものの、背自体はそれほど高くない。
そして、軍刀を空高く掲げ、日本の明日を見つめる強い眼差し。
大和のイメージ通りの姿であった。
(熊本城はまだ陥落せんのでごわすか!)
(まあ、西郷さん)
でも違った。
しかも薩摩弁も間違えている。
それにしても、武蔵は一体どこで西郷隆盛の知識を仕入れたのであろうか。
意外と謎の多い船魂である。
(う〜む・・・なぜこんな姿に・・・)
自分の姿の具現化が上手く行かないばかりか、見たこともないはずの人物ばかり出てくることに、大和は思わず考え
込んだ。
だが、生来悩むなどということは性に合わない大和。
こういった場合、その性格からして取るべき手段は一つである。
(こうなったら何度でもやってやる〜!!)
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。
そんな自棄の混じった叫び声により、第1回水上百変化大会が行なわれた。
脇に刀を差し、ビシッと整った袴姿。
(殿!明智勢の裏切りに御座います!!)
(信長ではなく、森蘭丸の方なんですね)
中世ヨーロッパ風の服装をし、小脇には本を抱えている。
(それでも地球は回っている!!)
(え〜と・・・ガリレオ・ガリレイ)
(正解!)
趣旨が変わり始めていた。
古代エジプトの民族衣装。
(ああ・・・私の鼻がもう少し低ければ・・・)
(今度はクレオパトラさんですか?)
武蔵は即答していく。
「武蔵」が完成してまだ1ヶ月程度。
船魂として誕生直後の割には物知りな船魂である。
(色々なものに成れるなんて、大和さんは凄いですね)
当の武蔵は、皮肉ではなく、純粋に尊敬を込めた言葉を大和に向ける。
(・・・武蔵さんって実は天然?)
余りに素直な武蔵の性格に、大和はそんな思いを抱いた。
あながち間違ってもいないのかもしれない。
(でも、今時珍しいぐらいにいい娘だよね。それに可愛いし・・・)
結局はそれのようだ。
随分と軟派な船魂になってしまった。
(こんな娘と一緒に戦えるなんて、僕は幸せだな〜)
ポロリロリン♪
大和の背後からは、そんなウクレレの音が聞こえてくるようであった。
(?何か仰いましたか?)
(い、いや何でもないよ)
どうやら、ついつい武蔵に聞こえるほどに声を大きくしてしまったらしい。
大和は慌ててなんでもない素振りを取り繕った。
(とにかく、これじゃあオカマになっちゃうよ。意地でも自分の姿を見つけてみせる!!)
ゲームによくありそうな目的である。
何はともあれ、僅かな休憩を挟んだ後、第二回水上百変化大会が実行された。
それから変化すること十数回。
(出来た〜!!)
何故か三国志時代、蜀5虎将軍の1人、黄忠にまで姿を変えた大和はとうとう自分の姿へと辿り着く事に成功してい
た。
元来平成出身のはずの大和の格好はフード付きの上着にジーンズという少しラフ目の格好。
大和にしては意外なほどに普通である。
(おめでとう御座います)
苦労の末の達成に、武蔵も祝いの言葉を大和に贈る。
もちろん、彼女は黄忠のことも見事に当てて見せた。
知識量で行けば、大和よりも余程多いようだ。
(でも、大和さんは変わった格好をされているのですね)
さすがに見たことのない格好をしている大和を、武蔵は少し不思議そうに眺めていた。
(まあ僕はハイカラですから)
理由になっているのか、いないのか。
少なくても、いくら服装は未来の物であっても、言葉は古いことだけは確かであった。
一方、大和による水上百変化が行なわれている頃の「大和」艦内では…
「か、艦内の機能がすべて停止しました!」
「なんだと!」
悲鳴のような報告が艦橋へと多数舞い込んだ。
「大和」内部の電源がすべて落ち、太陽の光が射し込む表層以外では暗闇が広がる。
「駄目です!まったく動きません!」
懸命に艦の機能を取り戻そうと奮闘する乗組員達の努力も空しく、「大和」は全く動く素振りを見せなかった。
「急にどうしたというんだ!…まさか敵の攻撃か!?」
艦橋に限らず、艦内全てに混乱が広がる。
そして、暗闇という状況は、その混乱を一気に増大させた。
中にはこれを敵の攻撃と考え、懸命に周囲に目を向ける見張り員まで出た。
「なんだこの事態は…」
様々な情報が乱れ飛んでくる中で、高柳艦長は呆然となっていた。
「こんなところで敵の攻撃なぞあるはずはない・・・」
現在「大和」がいるのは確固たる日本の勢力範囲、瀬戸内海である。
そのような場所で突然敵の攻撃を受けるようでは日本全土がまるっきり無防備という事に成る。
平時ならともかく、今は戦時中。
そんな事態が起こるはずがなかった。
「それに、まるで重油がすべてなくなったような状態ではないか…」
船というものは、特に軍艦ともなれば、停泊しているだけでも多くの電力を消費する。
「大和」ほどの戦艦ともなれば、電力のために消費する重油の量もかなりのものとなるのだ。
そこまで呟いて、高柳艦長は一つの事に思い当たった。
「副長…今「大和」には燃料が入っていたか?」
「いえ、これからの作戦のため、燃料庫は完全に空になっているはずです」
艦内の混乱を懸命に押えようとしていた副長は、高柳艦長の言葉を聞き逃さずすかさず答える。
この副長もまた、能力は確かなようだ。
「ということは…大和にすべてを頼っている状態だったわけだ」
「つまり今の状態は…」
副長も高柳艦長の言わんとすることに気がついた。
「大和!!貴様の仕業か〜!!」
雷鳴の如く艦全体に響き渡る高柳艦長の怒鳴り声が「大和」を揺るがした。
(な、なんだ〜!!)
舷先で呑気に武蔵と話していた大和は突然の怒鳴り声に身を竦めた。
何時の間にか武蔵も再び姿を現している。
(何か起こったのでしょうか?)
(さあ?)
「大和」艦内で起こっている異常事態に二人は全く気付いていなかった。
(とにかくちょっと行ってくるね)
そう言い残すと、大和は艦内に意識を巡らせる。
それに伴い、自然と大和の姿は消えていった。
ちなみに、大和と武蔵の姿は人間には見えないようだ。
(はい、いってらっしゃいませ)
(さて、私も艦を動かして見せないといけませんね)
大和を見送った武蔵もまた、艦へ意識を巡らせ、その姿を消した。
「こら!大和!!返事をしろ!!」
艦橋ではすぐに返事を返さない大和に対して苛立っていた。
この異常事態で気が立っているようだ。
(何々?どうしたの?騒々しいな〜)
そんな高柳艦長を相手に、事情をさっぱり理解していない大和が呑気そうに現れた。
「どうしたの?だと?貴様一体何をしておったのだ!」
大和の呑気さがさらに気に障り、高柳艦長は大和を怒鳴りつける。
(何って…アバンギャルドでアンニュイな一時を…)
「え〜い!何をわけのわからんことを!」
大和の言葉を遮った高柳艦長の言葉は実にもっともな意見であった。
「いいか!貴様のせいで今この「大和」は…」
「あの艦長…」
高柳艦長の言葉を、副長が遠慮がちに遮る。
「なんだ?今この不届き者に注意をしているところだ」
言葉を遮られた高柳艦長が不満気に副長に顔を向けた。
完全に怒りモードである。
こんなときには話し掛けないのが身のためではあるが、副長たる職務を果たさなくてはならない。
「そ、それが、全ての機能が復旧いたしました」
おびえた様子を見せながらも、副長が報告を行なった。
「何?」
(ねえねえ、一体何があったの?)
突然の事態の展開に戸惑いを隠せない高柳艦長に対し、いまだ事情がわからない大和は呑気に話し掛ける。
「あ、いや、先ほど「大和」艦内の電源がすべて落ちたのだ」
そんな大和に毒気を抜かれたのか、高柳艦長の口調が元の戻った。
(え?電源が?)
初めて異常事態が発生していたことを知った大和もさすがに驚いたようだ。
「ああ、てっきり貴様のせいだと思ったのだが…」
(なんで僕がそんなことを…)
高柳艦長の言葉に不満をこぼしそうになった大和であったが、その途中で先ほど武蔵が言った言葉が頭を過ぎった。
(艦を動かすときは艦全体に意識を巡らさなければならないので姿を維持出来ないんです)
((と言うことは…姿を現すと艦が動かないということだよね……))
大和の語尾が弱くなっていく。
((ヤバイ…僕のせいっぽい…どうしようか……))
自分のせいという結論に達した大和は、慌てて対応策を練り始めた。
その結果、
(なんで僕がそんなことしないといけないのさ)
誤魔化すことに決めたようだ。
「いや、お前ぐらいしか出来る奴がいないからな」
一方、大和のせいにしてしまったと罪悪感を覚えている高柳艦長の口調はおとなしめかった。
(・・・ってよく考えてみれば、別に僕がいなくても「大和」は動くじゃないか)
大和は懸命に自分の無実をアピールする。
かなり往生際の悪い奴である。
「今は無理だな」
そんな大和の言葉を、高柳艦長はあっさりと否定した。
(え?)
「今の「大和」はまったく重油を積んでいないんだ」
(な、なんで??)
いくら大和の、船魂の存在があるとはいえ、あまりに常識を外れている。
驚き、というよりも呆れるを通り越して突拍子もない状態だ。
「それはこれから説明しよう」
高柳艦長の口から驚くべき作戦が告げられた。
<次回予告>
高柳艦長から語られる驚くべき計画。
問われる大和型の能力。
襲い掛かるは数多の敵機。
大和は、そして武蔵はこの試練を突破する事が出来るのか?
次回!
「愉快な大和君、戦場を逝く」
「第12話 作戦名“試号作戦”!」
太平洋の歴史がまた1ページ。
「これが大和の力なのか・・・」
〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜
というわけで、緋夜さんからのリクエストで「愉快な大和君 第11話」をお送りしました。
え?リクエストから1週間も経っているじゃないかって?
何の、何の、エヴァのリクエストなんて数ヶ月放ってありますよ(爆)←笑えない
さて、ようやく次話から作戦開始です。
連合艦隊は果たしてどんな策を練っているのか。
本文中のヒントと、大和の能力などを考えて、当ててみてください☆
正解者には全く持って何もありません!(笑)
それではまた次回お会いしましょう!
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