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(夢のような甲板〜そ〜う〜じ〜)
気分良さげに歌を歌いながら、大和は大海原をひた走る。
(この時代に歌を作っておけば著作権は僕の物だよね〜)
そしていつものように下らない事も考えていた。
愉快な大和君、戦場を逝く
第12話 試号作戦
周りに島など見えない海の真ん中を、二隻の超大型戦艦が平均31ノットの速力で力強く波をかき分けながら進んでい
る。
「大和」型戦艦が2隻並んだ姿は壮観の一言であるが、同時にその壮観な光景すら小さく見せる海の巨大さをも現す光
景であった。
しかし、よく考えるとこの状態はおかしい。
通常戦艦のみで航行するなどありえない。
対潜水艦用としての駆逐艦や、敵の巡洋艦、駆逐艦を排除するための巡洋艦などと共に艦隊を編制しているのが普
通なのだ。
この異様な状態での航行は、そのまま作戦の異様さを示していた。
(輸送作戦!?)
高柳艦長の口から思いも掛けない作戦が聞かせれた。
「そうだ」
驚きというよりも戸惑いを隠せない大和を余所に、高柳艦長は話を続ける。
「ミッドウェイといい、今度のハワイといい、連合艦隊を挙げての作戦だ。実行するには大量の物資を必要とする」
(…つまり石油が足りないと?)
大和は知識の数少ない知識の中から、高柳艦長の言わんとすることを纏める。
「今はまだいい。しかし今後のことを考えると、多いに越したことはないからな」
その言葉は言外に大和の言葉を肯定していた。
(だったら輸送船をたくさん造りなさいって)
「それが出来れば苦労しない」
大和のもっともな意見に高柳艦長が軽く肩を落とす。
「米国との戦いはまだまだ続く。それに備えて今は一隻でも多くの軍艦が欲しいんだ」
(だいたい日本は補給への意識が低いんだよ)
陸軍に比べればまだマシかもしれないが、日本海軍もまた補給への認識は低い。
重要なのは敵と戦う直接的な武器。
そんな認識は上層部から下士官クラスに至るまで広く浸透していた。
もっとも、それらは決して日本に限った事ではないのだが。
「そう言うな。日本の国力の低さは俺たちも痛感しているんだ。残念ながら軍艦も、輸送船もなどと欲張る力は我が国
にはない」
日本が補給を軽視した一因として、国力の限界の話は避けて通れない。
日本は軍事力を高める事のみに精力を注いで、何とか短期間で大国の仲間入りをして来た国だ。
全体的な国力を上げている余裕はなかったし、実際満足に高められているとは言えない。
(でもなんで僕らなの?)
その程度のことは認識しているらしく、大和は話を元に戻す。
史実において「大和」は、「大和ホテル」とさげずまれるほどに拠点から動かなかった、動かされなかった戦艦である。
その「軽視」している物資輸送程度で日本最大、いや世界最大の戦艦を動かすとはとても考えられないのだ。
「潜水艦の攻撃ぐらいでは沈まない。ただでさえ巨大な上に、乗組員を減らした結果艦内に物資を置く場所が出来た。
移動に燃料を食わない。そして速い」
基本的には優秀な高柳艦長のこと、用意に予測できる大和の質問には充分過ぎるだけの答えが用意されていた。
「これほどの適任は他にないだろ」
(そう言われてみれば確かに…)
大和はあっさりと納得しているのだが、高柳艦長の答えには疑問に思うべきところがあった。
いかに「大和」が巨大とはいえ、物資輸送用に造られた輸送船には効率で及ばない。
そこに気付かず納得する辺り、しょせんは大和である。
(これは誰の発案?…ってこんな発送するのは某ギャンブラーぐらいだよね…)
「それに関しては、正解とだけ言っておこう」
以前のことに懲りたのか、高柳艦長はこの話題に関しては言葉少なだった。
「それにこの作戦には別の目的もある」
(え?)
「貴様と「武蔵」、それに新しく配置された応急処置部隊の訓練も兼ねているんだ」
応急処置部隊。
それは「大和」のために日本で始めて設立された部隊である。
大和の存在が明らかとなり、「大和」は乗組員を大幅に減らすことが出来た。
必要なのは念のために配置しておく各機関に最低限の人間と、通信、司令部の人間くらいである。
そのため大和からの提案もあり、応急処置を専門とする組織を配置したのだ。
通称ダメコン(ダメージ・コントロール)と呼ばれるこの分野においては、体系化されていた米国に比べ、日本は遅れて
いたとされる。
そこで、「大和」のさらなる浮沈化を狙って設立されたのだ。
もっとも、新たな組織のため、最優先とされた「大和」と「武蔵」の分しか存在しない。
また、その訓練不足も否定出来ない事実であった。
(僕も訓練するの?)
さも心外とばかりに大和が聞き返す。
「当たり前だ。貴様が「大和」の命運を握るのだからな」
(ええ〜〜!!めんどくさい〜!!)
既に御存知の通り、大和はとてもめんどくさがりだった。
そんな大和の態度に高柳艦長の言葉が厳しさを帯びる。
「貴様に拒否権はない。「大和」には我が国の命運が掛かっているんだからな」
(ぶ〜!!)
それにしても、こんなやつに命運を掛けてしまった日本が憐れに思えて仕方が無い。
「それに、「大和」には聖上も期待されているのだ。ハワイで大活躍した場合、聖上自ら「大和」に脚を運ばれるという話
まで出ている」
(なんと!?聖上が??)
さすがに予想外だったのか、大和が驚きの声を上げる。
「そうだ。だからこそ無様な戦いだけは出来ん」
高柳艦長の表情は真剣そのものであった。
ちなみに、聖上とは天皇陛下のことを指す。
この時代の人間には、まさに雲の上の存在。
極秘とされる大和の存在に関しても、しっかりと報告がなされているようだ。
(了解です!頑張って特訓して、必ずや聖上の御期待に答えてみせます!)
大和が今までにないような言葉を使うと共に、全身にやる気を漲らせる。
実は大和は熱烈な天皇支持で知人間に有名な存在であった。
「そうか、よくぞ言ってくれた!」
そんな大和に、高柳艦長は思わず涙ぐむ。
大和と高柳艦長。
二人の間に確かな絆が生まれた瞬間であった。
(それに、武蔵さんにもいいところを見せないと…)
が、絆はすぐに壊れた。
その後、船魂がいなかった時のために「武蔵」に積まれていた重油や乗組員達を降ろし、「大和」と「武蔵」の二隻で南
方の資源地帯へとその舳先を向けた。
(天気がいいときの航海は気持ちがいいよね〜)
大和は隣りを走っている武蔵に対して話し掛けた。
(そうですね)
それを武蔵は笑顔で返す。
とは言え、艦を操っている時は姿が見えないため、声の口調でしかわからない。
それでも大和は非常に楽しそうであった。
すっかり軟派な船魂である。
(見えるのは丸い地平線に、時々跳ねる魚の群れ。空を飛ぶ海鳥に…)
(飛行機ですね)
大和の言葉を武蔵が継いだ。
空に目を凝らすと、遥か遠くにゴマ粒ほどの点が多数見えた。
それは直に航空機とわかるまでに大きくなり、明らかに「大和」と「武蔵」へと向ってきていた。
その数実に100超!
ちなみに、今までの訓練の結果、大和と武蔵は約50キロ程度まで見通せることがわかっている。
主砲の最大射程が約42キロのため、充分な視界であろう。
もっとも、航空機を相手にするにはやや狭い。
(ふっ、今度も返り討ちだ〜!行くよ、武蔵さん!)
(はい!)
先ほどまでの浮かれ具合からは一変、大和は一言武蔵投げ掛けると心身ともに戦闘態勢へと入った。
徐々に姿を大きく見せ始めた航空機の集団が、突如二群に分かれる。
魚雷を抱えた雷撃機は低空から、爆弾を抱えている爆撃機は中空からの突入である。
一方、大和と武蔵は真横に並び、雷撃機の狙いを狭めながら待ち構える。
ドン!ドドン…
航空機が射程に入るやいなや、2隻の対空砲火が火を噴いた。
その目標は外側の対空砲火を雷撃機に、内側の対空砲火は上空の爆撃機へと定められている。
ビシビシビシ…
2隻から放たれた対空砲火が早くも数機へ命中弾を得る。
しかし、いずれの航空機も怯むこと無くそのまま突撃を続けていた。
2隻とも懸命に対空砲火を放つが、上と下から同時に行われる攻撃は対空砲火を分散させ、満足な命中弾を選られな
いように強いていた。
さらに雷撃機は海面から僅か10メートル前後の高さへと高度を下げ、、爆撃機も60度を超えるほどの急降下を行い、
対空砲火から懸命に逃れる。
両方とも、極めて高い技量を持った者でなければ出来ない、はっきりいって常識外れ動きだ。
(相変わらず上手い!)
そんな航空機の動きを見て、思わず大和が唸る。
(それでも、負けるわけにはいきませんね)
(もちろん!勝負はこれからだよ!!)
冷静に周囲を見回す大和と武蔵に、焦りはまったく見られなかった。
ビシバンビシ…
2隻と航空機の距離が近づくに従って、命中弾が増え始めた。
僅かに高度を上げすぎた雷撃機や、降下角度が緩い爆撃機を狙い撃ちにする。
それでも航空機からは攻撃が開始された。
魚雷が放った雷撃機が、艦との衝突を避けるために一気に高度を上げ、2隻の僅かに上を通過していく。
ほぼ同時に爆撃機からも250キロ爆弾が放たれ、海面に衝突しないよう機体を懸命に引き起こす。
(その程度じゃ当たらないよ!)
(私も頑張ります!)
大和と武蔵もすかさず回避行動へと入った。
急加速、急減速、急速旋回・・・
船魂としての能力をフルに使いながら次と降り注ぐ爆弾や魚雷を避けていく。
一方で2隻とも激しく蛇行を繰り返しながらも、その対空砲火は脆弱な下腹を晒す雷撃機や、一時的に速度の落ちる爆
撃機へと正確に向けられていた。
バシャーン!
二隻を外れた爆弾が、海面へと落ち、小さいとは言えない水柱を上げる。
(大和さん!左後方から魚雷が来ます!)
(了解!おっと、右中央からも魚雷が来るから気をつけて!)
(はい)
回避行動を取る過程である程度距離が離れるものの、対空砲火の密度を上げるために出来るだけ2隻が並んでいる
陣形にしようとしているだけに、片方を外れた魚雷がもう片方の命中路を取ることがある。
そのため、そういった魚雷にはお互い注意を促しているのだ。
艦同士がほとんどタイムラグなしで直接連絡を取れるために叶う、高度な連携だ。
さらに他の利点もある。
(最初の編隊は当たらない!二番目(の編隊)を狙って!)
(はい!わかりました)
そんな会話とともに、二隻を狙っていた爆撃機のうち、二番目の編隊に2隻の対空砲火が集中した。
(10時方向は私が狙います!大和さんは5時方向をお願いします!)
(任せて!)
大和と武蔵は戦いの最中お互いに連絡を取り合い、対空砲火の集中、効率的な分業を行えるのだ。
その結果対空砲火の精度、ひいては対空能力そのものがそれまでの常識を覆すまでに高まる。
しかし技量の高いものが集まっていると思われる航空隊の懸命な攻撃に、さすがに回避し切れない部分が出てくる。
カン!
懸命に回避を続けていた二隻であったが、とうとう爆弾の一つが武蔵を捉えた。
ドン!
続けて大和にも一発の魚雷が命中する。
(これぐらいじゃ・・・)
(負けません!!)
それでも戦艦の本領発揮か、2隻ともほとんど損害なく戦闘を続行した。
結局被弾はそれだけで済み、攻撃を終えた航空機は少し離れた空域で編成を整えると、元来たほうへと去っていっ
た。
(くそ〜!!一発食らっちゃったよ!)
去っていく航空機を見ながら、大和が悔しげに呟く。
(私も一つ避けきれませんでした…)
戦闘の最中に離れてしまったため、武蔵が大和の傍へと寄せて来た。
(僕は魚雷だからね〜。武蔵さんの方が損害は小さいでしょ)
艦に与える損害としては、爆弾よりも魚雷の方が格段に大きい。
装甲の薄い喫水線下に命中する魚雷を受けると、浸水が起こり最悪沈没へと繋がるのだ。
(ふふふ、じゃあ今回は私の勝ちですね)
悔しがる大和が面白いのか、武蔵が少しふざけたように言った。
(今度は負けないからね!)
(私も負けませんよ)
二人の間には、戦闘直後にも関わらず和気藹々とした雰囲気が漂っていた。
<次回予告>
初めての本格的な戦いを乗り切った大和。
示される恐るべき戦闘能力。
実施される輸送作戦。
ハワイへと向う準備は着々と進められていた。
次回!
「愉快な大和君、戦場を逝く」
「第13話 確執」
太平洋の歴史がまた1ページ。
「この作戦にそんな理由が・・・」
〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜
というわけで、一体誰からのリクエストが溜まっているのか既に私にもわからなくなってしまった「愉快な大和君 第12
話」をお送りしました。
てかこれはリクエスト作品のはずなのに更新が1番早いぞ・・・
とはいえ三ヶ月ぶりなんですが(^^;)
しかし中々ハワイに行けないな・・・
終戦まで何話掛かるんだろう・・・
そもそも副題と内容が全然合ってないし・・・
まあ地道に行きますか。
テストも終わり、パソコンの不備も直ったのでこれからは早くなるの・・・のかな?
皆様どうぞ見捨てずにいてやって下さい。
よ〜し!次はエヴァと異伝とオリジナルだ〜!!
それではまた次回お会いしましょう。
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