|
(と、いうわけで皆協力してくれるそうです)
「はぁ・・・」
大和の言葉を聞いて、俺は思わず溜息をついてしまった。
一体何が「と、いうわけ」なんだ?
他の船魂が協力してくれるということは理解出来るが・・・
こいつは、俺には大和以外の船魂の言葉を聞こえないのを分かっているのだろうか?
いや、おそらくわかっている、いないの問題ではないな。
そんなこと気にもしていないに決まっている。
こいつは、大和はそういう奴なのだ。
このところ、溜息をつくことが増えた気がする。
いや、気のせいではない。
明らかに増えているだろう。
それどころか最近では胃が痛くなることさえある。
以前はほとんど飲むことの無かった胃薬の消費が早い事早い事。
(もしストレスで倒れたら戦傷扱いになるのだろうか)
思わずそんなくだらないことまで考えてしまう辺り、俺はかなり重症のようだ。
全ての原因は、分かり過ぎるほど分かっている。
ほんの三ヶ月ほど前に現れたこいつ、大和を名乗る船魂、のせいなのだ。
ミッドウェー海戦の直前に現れたこいつは存在そのものを始めとして、全ての面において常識外れな奴だった。
こいつは上手く使えば戦争の趨勢をも左右しかねないほどの能力を秘めていた。
航空機贔屓で有名な山本長官も大きな期待を寄せているほどだ。
性格に関しても決して悪い奴ではないのは認めよう。
どういうわけか、この戦争に関する知識も持っている。
下手をすればそこらの参謀では叶わないほどの判断力だ。
だが如何せん我侭・・・とは少し違うな。
気分屋、そう、こいつは根っからの気分屋なんだ。
俺はこいつと会ってつくづく実感したよ。
我侭なやつの方が余程扱いやすい。
軍には我侭な奴もいる。
むしろそういった輩の方が多いくらいだ。
以前は連中と関わるのは御免だと思っていた。
だが、大和よりは扱いやすい。
奴等は自分のことを中心に考えるから、少なくともその思考回路を読むことが出来る。
だが、こいつの思考回路だけは俺には一生理解出来ないだろう。
なにせ自分にも不利になることに拘ったりする奴だからな。
唯一大和と話せるということで、必然的に俺は大和の艦長を続行することになってしまったのだが・・・
正直言ってこの先不安だ。
この戦争を勝つためには「大和」の能力をフルに活かさなければならない。
それはわかっている。
だが、俺にこいつを上手く扱う事が出来るのだろうか?
自信は・・・無い。
高柳艦長、その悩みは果てしなく深く、全く光の見えないものであった。
愉快な大和君戦場を逝く(異伝)
第12話 発進!独立遊撃艦隊!!
「・・・まあいい」
深い思考の渦にその身を沈めていた高柳艦長であったが、とりあえず自分の中で完結を得たようだ。
(それで?これらか何をすればいいの?)
そんな高柳艦長を
(管理職って大変だよね〜)
などと、元凶をさっぱり忘れ去って考えていた大和が次なる指示を求める。
ちなみに、他の3隻の船魂は初心者同士情報交換を兼ねた歓談を行っていた。
もっとも、果たして大和が船魂ベテランかは甚だ疑問である。
「ああ、もう少し待て。それは「金剛」が来てから話す」
(え〜、なんで〜?)
大和の質問を、高柳艦長はさらりと流すと
(どうせ僕がみんなに通訳するしかないんだから、今言ってもいいと思うんだけど)
もっともにも思える大和の追求も、
「今のうちに言うと、肝心の時までに忘れそうだからな」
一刀両断の元に斬って捨てた。
判断そのものは正しいのであるが、言い方1つをとっても高柳艦長に遠慮が無くなっている。
これは大和との間に確固たる信頼関係が生まれている・・・のとは少し違う気がしないでもない。
(・・・納得)
大和も特に傷付く様子も無く、あっさりとその事実を認めた。
(う〜む・・・僕の事をそこまで見抜くとは・・・侮れん・・・)
それどころか、感心までしている有様だ。
果たして大和に傷付くとまで行かなくとも、堪えるということはあるのだろうか?
そんな会話を二人・・・一人と一艦がしていると、周囲に無数にある島の1つ、何処にでもありそうな小さな島の影から
「金剛」がタイミングよく姿を現した。
「金剛」は「大和」とは別のドックで改装工事を受けており、改装を終えた後単艦、呉軍港へと向っていたのだ。
ちなみにここ呉軍港は瀬戸内海に面しており、島がそこら中にあり、水深も浅いところが多い。
お陰で敵潜水艦が侵入出来ない、極めて安全な海域となっているのだ。
(あ、金剛さん。お久し振りです)
これまた忘れられていそうだが、360度、40キロ以上を見通すことが出来るほどの視界を持つ大和がいち早く「金剛」
を見つけ声を掛けた。
(お久し振りですねえ、大和さん)
(改装痛かったでしょ〜)
またもや最初の質問はそれであった。
よほど改装中に痛い思いをしたらしい。
(いや、そんなに痛くはなかったですよ)
(え〜、そうなんですか〜)
大和は思いっきり不満そうだった。
一体どんな答えを期待していたのだろうか。
高柳艦長ならずとも、よくわからない奴である。
(あれ、そっちの3隻はなんですか?)
そんなやり取りの後、金剛は大和の背後に控えていた3隻に気付き、大和に尋ねる。
3隻の船魂はというと「金剛」の姿を認めると歓談をやめ、「大和」の背後の整列していたのだ。
どうも妙なところで行儀正しい連中である。
(聞いてませんか?新しい船魂さん達だそうです)
(船魂って・・・2隻は「陸奥」と「利根」ですよね?)
大和よりも1隻多く、「陸奥」まで分かったようだが、さすがに「神通」はわからなかったようだ。
圧倒的な存在感を誇る戦艦に属する「陸奥」、独特の主砲配置をしている「利根」に比べると、軽巡に過ぎない「神通」
は地味なのだろう。
その分、船魂の性格は随分と個性的なのでバランス的には丁度いいのかもしれない。
(ええ、そうですよ)
そう言うと大和は船体をずらし、金剛からしかっりと3隻が見られる配慮する。
(紹介しますね。右から陸奥さん、利根さん、神通さんです)
(((えっ?)))
先ほどの自己紹介を全て無視するかのような大和の紹介の仕方に、3隻は思わず声を上げた。
それは不服と言うよりもただ単に唖然としたいった感じである。
その気持ちはわからなくもない。
(やっぱり艦名で呼ぶんですか・・・)
そんなやり取りを見た金剛が疲れたように声を上げた。
どうやら自分が金剛と呼ばれるようになったときのことを思い出しているらしい。
(もちろんです!じゃないと混乱しちゃうじゃないですか)
大和はそんな金剛の態度など気にするはずも無く、意味もなく胸を張った。
(私のときも強引でしたもんね・・・)
そう呟く金剛の脳裏にはミッドウェイの帰り道でのやり取りが浮かんでいた。
(というわけで、蔵王さんのことは金剛さんって呼びますね)
大和の切り出しは相変わらず唐突であった。
(え、なんでですか?)
一方の蔵王は、さすがに大和のこの突然の切り出しに付いていけず、堪らず聞き返す。
(だって、今のままじゃあ「金剛」を呼ぶのに蔵王さんって呼ばないといけないし・・・混乱しちゃうじゃないですか)
さも名案とばかりに大和はニコニコ顔であった。
(そんなに混乱することもないと思うんですけど・・・)
(あ、でも蔵王さんだけ金剛さんって呼ぶんじゃ不公平ですね)
聞いちゃいない。
(そうだ!変わりに僕のことはやまとじゃなくて大和と呼んでいいですよ!)
(そんなの言葉にしたら変わらないじゃないですか・・・)
もっともな突っ込みであった。
お互い様のようで、どう考えても一方的に蔵王に損である。
大和が狡賢いのか、はたまた深く考えていないのか・・・
恐らく後者であろう。
(よし!話も纏まったし・・・これから頑張りましょ〜!!)
言いたい事だけを言うと、大和は単艦速度を上げ、張り切って本土へと駆け出す。
(ちょと、大和さ〜ん。待って下さいよ〜!)
その結果、1人取り残される形となった蔵王は慌てて速度を上げると、大和の後を追った。
彼はこの先ずっと大和に振り回されるのかと思うと、目頭を熱くせずにはいられない。
(というわけですから、あなた達も諦めた方がいいです)
一通り大和の強引さについて説明すると、金剛は3隻に対し、諭すように話し掛けた。
(・・・なんか失礼な言われ方をしているような気が・・・)
(では改めまして、どうも始めまして)
蔵王は大和の言葉を無視すると、挨拶をした。
(蔵王改め金剛です)
(こちらこそ始めまして。凍夏改め陸奥です)
(私は利根…こうなる前はキタキツネって呼ばれていました。よろしく)
(自分は剣牙虎改め神通でぃ〜す♪)
((((あ、怪しい・・・))))
ここでも皆の息はピッタリであった。
あったばかりの船魂の息を1つにするとは・・・神通も侮れない。
(まあいいか。取りあえずこれで全員かな?)
「全員意志の疎通が取れたようだな」
大和の言葉から、大体の状況を把握していた高柳艦長が声を掛ける。
(あいあいさ〜!ばっちりでっせ〜)
妙な言葉だった。
「・・・とにかくこれで山本長官の構想が実行出来るな」
高柳艦長は大和の言葉を受け流すことを覚えた!
着実にレベルアップしているようだ。
(構想?)
「ああ、そうだ!」
大和の言葉に、高柳艦長は大きく頷いた。
「ここいる艦に「伊勢」を加えた6隻で独立遊撃艦隊を設立する!」
(・・・設立する!)
高柳艦長の言葉が聞こえない他の船魂のために大和は同時通訳をしていた。
大和にしては気が利く行いである。
(((((独立遊撃艦隊?)))))
同時通訳していた大和も他の船魂に合わせて驚いている。
なかなか合わせる奴らだ。
「そうだ!そしてこの独立遊撃艦隊はその通称に恐れ多くも陛下の紋を頂いている」
(陛下の紋?・・・菊艦隊?)
「いや、少し違う」
皇室の家紋、「菊」。
それを頂いているということで、安直に「菊艦隊」と想像した大和の予想は外れていた。
(もったいぶらないで教えてよ〜)
「この独立遊撃艦隊の通称は・・・」
(通称は?)
急かす大和の言葉を余所に、高柳艦長は勿体付けるようにたっぷり間を置くと、声高らかに一言言い放った。
「菊水艦隊だ!」
(((((菊水艦隊!?))))))
(不吉な・・・)
(ふ、不吉だ・・・)
(不吉ださ・・・)
(不吉ですね・・・)
(不吉・・・かな〜?)
が、船魂達の反応は今一であった。
「菊水」・・・
史実における「大和」特攻作戦の作戦名(通称)であった。
(・・・仕方ない。とりあえずは出発だ〜!!)
名称発表の後、何とか名前を変更しようと高柳艦長に直談判していた大和であったが、その努力は報われなかった。
仕方なく大和も名称変更を諦めると、気持ちを切り替えて威勢良く言い、早速動き出す。
が、最早お約束のように、そんな大和の勢いはあっさりと撃ち砕かれる。
((((どこへですか?))))
(・・・え?)
大和を除く4隻揃った言葉に大和の動きは止まる。
(私はまだ何も聞いていないんですが・・・)
(私も何も聞いてないです)
(え、え〜と・・・)
大和が口篭る。
(今後の作戦をお聞かせいただけますかな?)
(それはその・・・)
口篭る。
(私は魚雷が撃てれば満足ですよ♪出来れば獲物が沢山居る海域が良いな〜♪)
(・・・・・)
口篭・・・る?
4隻の視線が集まる中、大和は言葉に窮していた。
勢いよく掛け声を掛けてみたものの、大和自身どうするかなんて考えていない。
(・・・・・)
考える。
(・・・・・)
考える。
(・・・・・)
考える。
(・・・わからん)
そして諦める。
当然のことながら、そのつけは
(よし、高柳艦長に聞こう!)
高柳艦長へと回されるのである。
(やまとさんってこんな性格なんですか・・・ひそひそ)
(そうなんです。こんな性格です・・・ひそひそ)
(こんな性格とは知りませんでした・・・ひそひそ)
(私にはイメージ通りなんですがね〜・・・ひそひそ)
そんな大和を見ていた4隻は小声で話す。
実際の大和に会った事のある者とない者で意見が分かれているようだ。
そしてその声は大和にも聞こえていた。
(やばい・・・僕の旗艦としての威厳が・・・)
現時点における連合艦隊最強艦にして、「菊水艦隊」の旗艦。
やはりそれなりの風格や威厳が求められると大和にも分かっているのだろう。
もちろん、大和にはそんなもの最初から備わってはいないので、心配するだけ無駄である。
更に言えば、「大和」が旗艦だと誰も一言も言っていない。
大和が勝手に「菊水艦隊」の旗艦に収まっているつもりになっているのだ。
(ねえねえ、高柳艦長)
「なんだ、まだ聞きたい事があるのか?」
艦運営に関する事項について副長と話すなど、業務に付いていた高柳艦長が大和の声を聞いて顔を上げる。
(僕達の最初の作戦って決まってるの?)
内心
(決まっていないと僕の立場が益々悪くなる〜)
等と心配している大和は、期待しながら高柳艦長に聞いてみたが、こういうときのお約束。
「決まっていない」
高柳艦長からは非常な答えが返ってくるのだった。
<次回予告>
決着するハワイ決戦。
それを受けて動き出す菊水艦隊。
個性的な艦隊は果たして無事機能するのか。
菊水艦隊いよいよ初陣!
次回!
「愉快な大和君、戦場を逝く(異伝)」
「第13話 作戦会議」
皇国の歴史がまた1ページ。
(やっぱり多数決〜☆)
〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜
いや、もう何が何やらな執筆の遅さで、参加して下さっている人たちにも迷惑を掛けっぱなしです。
次回でようやく作戦も決まり、活動開始!
う〜む・・・他には何も言うことがないのでもう終わり(笑)
それでは次回お会いしましょう〜。
|
|
|