バシャン!



「大和」を外れた模擬爆弾が虚しく水柱を上げる。




シューーー・・・・



「大和」を外れた模擬魚雷が推進力を失い、泡だけを残して海底へと沈む。




ボチャン!ボチャン!ボチャン!



「大和」を外れた模擬爆弾が・・・




シューーー・・・



「大和」を外れた模擬魚雷が・・・




「大和」を外れた・・・



「大和」を外れた・・・



「大和」を外れた・・・




・・・・・



・・・・・



・・・・・







(だ〜!!この下手くそ〜!!)





シュババババ!!


ドン!ドン!ドドン!



大和の怒鳴り声と共に、324門の対空砲火全てが一斉に火を吹いた。







「愉快な大和君、戦場へ逝く」


「第15話 大和沈没?」






ダン!


ガン!



直後、10を超える機体が次々と被弾し、撃墜扱いとなる。





(それでも日本軍の兵士か〜!!愚か者〜〜!!)





ダダダダダン!



先ほどから至近弾の1つも出さない陸軍航空隊の攻撃に、何故か怒り心頭の大和。


全身に針鼠のように装備された対空砲火で次々と陸軍機に撃墜跡をつけていく。



その命中率は、先ほど海軍機を相手にした時のおよそ2倍。



怒りの感情の力なのか。


高柳艦長の言うことが本当ならば、当てられるのも嫌だが、余りにも当たらないというのも嫌らしい。



中々複雑な心境である。



回避行動を行いながら、周囲を見渡せば「武蔵」も余裕を持って陸軍機の投弾を回避し続けている。




大和と武蔵の回避能力。


模擬弾とは言え、激しく打ち上げる対空砲火。


慣れない対艦攻撃。


急遽行なったとしか見えないチグハグな編制。



残念ながら陸軍航空隊に勝ち目は無かった。


結局、彼らは一発の命中弾を出すこと無く、帰還の途へと着いた。





(よっしゃ〜!勝利!)


(何とかなりましたね)





そんな敗軍状態の陸軍航空隊に送られるは大和と武蔵の勝鬨の声。


もっとも、聞こえるはずも無いのだが。





(さて、陸さんも追っ払ったことだし、早速高柳艦長から事情を・・・)





この時、「大和」乗組員達はそれぞれ肩の力を抜いていた。


訓練とは言え、実戦さながらに行なわれる。


息を抜けない時間が続いていたのだ。


全弾回避に成功し、ほっと一息着くのも当然のことであろう。



ただ1人細かい事情を知る高柳艦長に至っては、艦橋でガッツポーズを決めている。



大和と武蔵は戦いの後の昂揚感を感じながら、去っていく陸軍航空隊を見送っていた。




だからこそ・・・





(・・・??あれは何でしょう?)


(え?え〜と、あれは・・・)





武蔵の声に引かれて大和が目にした物は・・・





(ぎょ、魚雷〜〜!!)





発見が遅れた。





(何であんな所にあるんだろう?陸さんはもう帰っていったのに・・・)





そう疑問に思う大和であったが、とりあえず回避運動に移る。


発見こそ遅れたものの、今までの経験から言えば、何とか避けられそうだな、距離である。



しかし、大和は迫ってくる魚雷に何処か違和感を感じていた。


そして、その違和感の招待に気付くのは、大和と武蔵ほぼ同時であった。





(・・・!?おかしい、今までのより早い!それに同時に三つ!?)


(!!大和さん、あれは本物です!!)





武蔵が今までに聞いたことが無い大声を上げる。





(なんでこんな所に!・・・くっ、かわせるか!?)





考えている暇は無い。


魚雷は揃いも揃って「大和」の進行へと襲い掛かろうとしていた。


今までの模擬魚雷の速度ならば回避し得ただろうが、本物の魚雷ではどうか。



3射線の魚雷は少しずつ角度を付けられているため、直進するだけでは交わし切れない。


大和は懸命に舵を切るが、余りにも巨大な船体は大和の能力を持ってしてもすぐには反応しない。




(くっ!!遅い!!)





大和はこのとき初めて自らの巨体を恨んだ。







「ぎょ、魚雷接近中!あれは・・・本物です!!」


「なんだとっ!」


ちょうどその頃、「大和」の見張り員もようやく接近する魚雷に気付き、その報告が高柳艦長へと入る。


どうやら、高柳艦長は大和の声を聞いていなかったようだ。


と同時に、「大和」の船体が突如大きく傾き始めた。



「くっ・・・報告が遅過ぎる!ちゃんと見張っておけ!」


慌てて近くの壁に手を付き、高柳艦長は何とか転倒を免れる。


体勢を立て直した高柳艦長が、艦橋から周辺海域を見渡した。



「・・・あれか!」


そして、それほど時を置かずして「大和」に接近中の魚雷を発見した。


同時に、魚雷と「大和」の進行方向、速度などを基に、長きに渡る厳しい訓練を経て戦艦の艦長にまでなった高柳艦長
の頭脳が間も無く訪れる瞬間を予測した。



「いかん!このままでは・・・」








(くぅ〜!!)





大和は懸命に身体を捻る。


しかし、「大和」はそこまで器用に大和の思い通りには動けない。



「大和」はようやく進路を変え始めたところであった。





(こ、このままじゃ・・・)


(大和さん!!)





基本的に素人である大和の目にも、魚雷の1つが自分に命中しそうであることはわかる。


不安げに成り行きを見守っていた武蔵の声にも悲鳴が混じる。



援護しようにも、海中を進む魚雷を止める手立ては無い。





(せめて、せめて実弾が装填してあれば・・・)





砲弾を魚雷の弾頭に打ち込めれば、命中前に爆発させることも出来る。


だがそれも、砲弾が海中で威力を大きく減じられるため、可能性としては少ない。



模擬弾では言わずもがなであった。





(こうなったら、少しでも被害が少なくなる場所に・・・)





どうせ避けられないなら、当てる所を選ぼう。


大和のそう考え始めた時



「大和、このままじゃ当たる!俺が言うとおりに動け!」


高柳艦長が大声で大和に呼びかけた。





(高柳艦長!?・・・了解!)





この緊急時、それも突然の呼びかけに一瞬驚きを見せた大和であったが、すぐに高柳艦長に応じる。


戦術面で言えば、軍人として長い間訓練してきた高柳艦長に明らかに分がある。



大和はそれが分かっているからこそ、あっさりと高柳艦長の指示に従うことを選んだのだ。



「取り舵30・・・いや35、速力28」





(35・・・28・・・)





大和が高柳艦長の指示に忠実に従っている間にも、右後方から3本の魚雷がどんどん近づいて来る。


そのうち1本はどうやら大和の進行先から外れているようであったが、残る2本は「大和」目指して正確に進んでいた。



高柳艦長はじっと魚雷を見据えながら、時機を待つ。



「・・・・・」





(・・・・・)





大和も、いつでも高柳艦長の指示通りに動けるように準備しながら、精神を集中させている。


「大和」乗組員も武蔵も、そして「武蔵」の乗組員も皆一応に息を呑みながら状況を見守っていた。


もはや彼らに出来る事は何も無い。



全てを握っているのは



「後300!」



魚雷発見が遅れたことを悔やむ見張り員と



「後進一杯!!」


己の経験を生かし魚雷回避に挑む高柳艦長と





(どっしゃー!!)





高柳艦長の無茶な指示を実行する大和である。





(ぐぅおおおっ〜!!)





無理な機動に「大和」の船体が軋み、大和が呻き声を上げる。


28ノットから一気に後進へ、身体に大きなGが掛かった状態なのだ。



その甲斐あって、「大和」は速力を減じて行く。


そんな「大和」のほんの僅か後方、それこそセンチ単位の場所を1本の魚雷が通過して行く。



残るは1本。



「大和」の前部へと向かっていたその魚雷は、「大和」の急減速により艦首へと向かう進路とに乗っていた。



やり過ごせるか、それとも当たるのか。



指示を出した高柳艦長も運を天に、いや全てを大和に託して見守っている。


命中した時のことを考えて、応急処置部隊は既に艦首へと駆け出している。




魚雷との距離残り50m。





(ぬぬぬぬぬ・・・)





大和はただひたすらに「大和」の速度を落としていく。




残り30m。



「大和」に真正面から当たる波すら、今はありがたい。




残り10m。



静まり返る「大和」艦内。




残り8m。



僚艦の無事を祈る「武蔵」艦内。




残り6m。



こんな時後ろから手を引っ張ってやる事も出来ない自分をやる不甲斐無く感じる武蔵。




残り4m。




残り3m。




残り2m。




残り1m。



・・・・・



・・・・・




「魚雷回避成功!」


見張り員の言葉に、艦内が沸いた。



「お見事です、艦長」


「やったか・・・」


安心したと同時に、高柳艦長の全身から一気に汗が噴出す。



「敵潜水艦への対処はどうしますか?」


「放っておけ。見張りを厳重にして直ちにこの海域を離脱する」


付近にいると思われる敵潜水艦を攻撃しようにも、戦艦には潜水艦攻撃に不可欠な爆雷が積まれていない。


そのため、通常は巡洋艦や駆逐艦を随伴して航行するのだ。



「大和」と「武蔵」は30ノットで常時活動可能なため、潜水艦を振り切ることを前提としての編制である。


今回のように訓練の隙を突かれるとは、想定外の出来事なのだ。





(やりましたね、大和さん)


(いや〜、あれぐらい楽勝ですよ)





武蔵の呼びかけに、大和は余裕だと言わんばかりに鼻高々だ。


実は物凄く焦ったことは秘密である。



男には、見栄を張らねばならぬ時があるのである。



「よくやったな、大和」


一通り艦内への指示を終えた高柳艦長から、大和に労いの言葉が掛けられる。





(高柳艦長の指示のおかげだよ)





「謙遜するな。貴様の能力がなきゃ到底不可能だった」





(高柳艦長の指示が無くても、ね)





大和は珍しく高柳艦長を立てていた。


自分では避けられなかったであろう魚雷を、避けて見せた高柳艦長。



高柳艦長の生粋の軍人としての能力を目の当たりにし、素直に評価しているのだろう。





「それじゃあ、お互いの・・・」





(健闘を称えますか!)





大和と高柳艦長の間に、「戦友」と言う確かな絆が生まれた一瞬であった。



そしてこの時、「大和」は高柳艦長に事情を聞くという話をすっかり失念してしまったことに気付いていなかった。










「艦長、敵艦が去っていきますが・・・」


「・・・えっ?」


一方こちらは「大和」を攻撃した米潜水艦。


反撃を避けるために懸命に急速潜航し、ひたすら静かにしていたのだが、はっきり言って無視された。



それもそのはず。


「・・・どうやら敵は戦艦だけだったようですね」


「・・・マジか?」


まさか戦艦だけで航行しているとは思えず、付近にいるであろう巡洋艦や駆逐艦を警戒したのだが、そんな物は初め
から存在しないのだ。



本来ならば、攻撃を受けないに越した事はないのだが



「こんなことなら・・・第2射が出来ましたね」


「・・・言うな」


どこか虚しさを覚える。



名も無き艦長に率いられた名も無き米潜水艦の士気は猛烈に下がっていた。



















<次回予告>


いまだ何かしら隠している高柳艦長。


問い詰める大和。


かわす高柳艦長。



南方の海を舞台に1つの戦いが行なわれようとしていた。





次回!


「愉快な大和君、戦場を逝く」


「第16話 真実」





太平洋の歴史がまた1ページ。





(とっとと話せ〜〜!!)











〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜


どうもやまとで御座います。



書いてから思ったのですが、この話14話の前に入れても普通に通じそうです(汗)



予定ではもっと進むはずだったので、先に14話を書いたのですが失敗ですね。



さて、次回高柳艦長の秘密ごとが明かされ、一悶着あったあと、ようやくハワイ攻略戦です。




なのにもう15話・・・


一体この作品は何話かかるのだろうか・・・





それではまた次回お会いしまよう〜。









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