「今時戦艦だけで行動しやがって!ジャップのくせに俺達を舐めすぎなんだよ!」


「俺が最初に当ててやる!!」



米陸軍航空隊の面々が、様々な言葉を叫びながら操縦桿を倒す。




キィーーーーン!!



パイロットの操作に実に従順に、腹に爆弾を抱えた爆撃機が、次々と「大和」に狙いを定め急降下を開始した。


過去の訓練とは違い、正真正銘の爆弾を「大和」へお見舞いしに来ているのだ。





(こっちだって好きで戦艦だけで行動してるわけじゃないやい!)





ダダン!



当然それを向かえ討つ「大和」からも、実弾での返礼がなされていた。


常識を逸したまでに装備された全身の対空砲が一斉に火を噴く光景は、模擬弾の時とは一味も二味も違うものを感じ
させた。



お互いに声が聞こえないのに、会話しているように見えるのは御愛嬌である。



バン・・・バシャン!!


「大和」からの対空砲火を受けた一機が、バランスを崩し一直線に海面へと落下し、盛大な飛沫を上げた。


さらに一機が、10サンチ砲の直撃を受け空中に四散する。



ようやく「大和」からの対空砲を逃れた機体も、脇から「武蔵」の対空砲火を受け次々と火を噴いていく。



「くそったれ!たった2隻のくせに何て火力だ!」


そんな言葉を吐き捨てながらも、爆撃機は怯む事無く「大和」へと突進を続ける。



そして、ある地点で爆弾が次々と放たれた。


同時に一機に操縦桿が引かれ、機体を上昇させるため行動に移る。





(そして、その時が1番狙いやすいのだよ!!)





いい度胸なのか、はたまた無謀なのか。


自分に向かって複数の爆弾が迫る中、大和は冷静に速度を落とした爆撃機を狙い撃ちにしていた。



もちろん、爆弾を回避する事も忘れない。


元々命中コースに乗っていなかったこともあり、投弾された爆弾全てを回避することに成功した。



ただ射撃に夢中になり過ぎていたのか、1発はかなりギリギリの所に水柱をあげた。



そして大和は





(ジ、ジョワ〜〜ン・・・)





至近弾でも結構痛いことに気が付いたのであった。





(大和さん、まだ来ます!)





何とか第一波である攻撃を凌いだものの、たった2隻でハワイ航空隊の攻撃範囲に侵入した大和達に休まる時間は無
い。



続いての敵は、高度3000メートル付近から集団で爆弾を降らしてくる水平爆撃隊のお出ましのようである。


その高度ゆえに、1発1発の命中率は低いものの、如何せん数が多い。



また、敵が高度のいるために対空砲の効果も薄い。


というよりも、先がまだ長い事を理解している大和と武蔵が出来るだけ無駄弾を撃たないように発砲を控えているのだ
が。


もちろん、高度を下げようとすれば容赦なく発砲し、爆弾ごと機体を破壊しようと虎視眈々と狙いは定めている。



おかげで、高度3000メートルにおいては、水平爆撃隊の面々は充分な狙いを定めて投弾することが出来ていた。


そんなことをされては





(にょわ!にょわ!にょわ〜〜!!)





避ける方は大変である。


何とか命中弾こそ避けているものの、「大和」の周囲には外れた爆弾が上げる水柱が乱立していた。





(ていうか、さっきから僕ばっか狙われてませんか〜〜!?)





かすかに視界に捉えた「武蔵」には、申し訳程度の爆弾しか降って来ておらず、武蔵は余裕を持って避けている。





(まだ、敵機の数もあまり多くないから、狙いを絞っているのでしょう。頑張って下さいね)





明るい口調でそういう武蔵に大和は何も言い返せなかった。


というよりも






             バシャン!


    バシャン!               バシャン!


バシャン!    





 (絶対当たってやるもんか〜!)     





 バシャン!

 
    バシャン!               バシャン! 


             バシャン!




言い返す余裕がないようだ。





(ゼハ・・・ゼェ・・・ゼハ・・・ゼェ・・・)





急降下爆撃に続き、水平爆撃も何とか回避し切った大和。



そんな大和に向かって





(・・・今度は雷撃機のお目見えですね)





武蔵から容赦の無い声が掛けられた。



なるほど、よく見れば10機ばかりの航空機が低空から「大和」に接近を図っていた。


確かにこんな低高度で侵入してくるのは雷撃機以外にはいないだろう。


が、今の大和にそんな冷静な報告はいらない。




プチッ。




その航空機編隊を確認した大和は、頭のどこかが切れる音をような気がした。





(だ〜!お前ら一々1種類ずつ出てくるんじゃ〜い!!来る時一遍に来〜い!!)





最近の子供は切れやすいのだ。


まあこれは1942年のお話ではあるのだが、一応大和は現代人と言うことで。




ブゥーン、ブゥーン。




世の中では、「悪い事は口に出すと、本当になる」と言われる事がある。




ブウォーン、ブウォーン。




もっともこの場合、大和が望んだことなので悪い事なのかどうかは定かではないが。




バババババ・・・





(・・・本当にまとめて来ましたね)





雲の間から姿を見せたのは、先ほど見かけたばかりの急降下爆撃機、水平爆撃機の群。


御丁寧に数が倍以上に増えている。


さらには、おまけとばかりに戦闘機まで一緒に現れていた。



はたしてこれが幸なのか不幸なのかは知らないが、とりあえず、大和の望みが叶った事だけは確かであった。





(アハ、アハ・・・アハハハハ・・・)





その光景を眺めて、なにやら虚ろな笑い声を上げる大和。





(陸軍機は海上航行出来ないんじゃなかったのか〜〜!!)





そんな絶叫も



「やれやれ、こいつらは俺達が連れて来てやらないと海の上も飛べないんだからな」


たまたま、本当にたまたま上空のB−17の機内で交わされていた会話も、100を超える航空機の音にかき消される運
命であった。



もっとも、陸上機=陸軍機というわけではなく、海軍の中にも陸上機はかなりの数存在する。


が、今の大和にそこまで考えを巡らす余裕はなかった。





ハワイを巡る戦いは、まだまだ始まったばかりである。







「愉快な大和君、戦場を逝く」



「第19話 死闘開幕!」







(さ、さすがに疲れた・・・)





一連の航空攻撃が終了した後、さすがの大和も音を上げていた。





(さすがに全てを避けきることは出来ませんでしたね)





比較的大和よりも狙われることが少なかった武蔵は、まだまだ余裕の表情であった。




一連の、と称するにはやや五月雨的過ぎたかもしれないが、航空攻撃で延べ200機を越す航空機からの攻撃を受け
た大和達。


大和、武蔵もその能力を遺憾なく発揮し、米航空隊に多大の損害を与えたのだが、自分達も被害から逃れる事は出来
なかった。


と言っても、損害そのものは皆無と言ってもよい。



「武蔵」に唯一命中した爆弾は、最も装甲の暑い主砲塔に当たり、あっさりと弾き飛ばされた。


一方「大和」には二発の爆弾が命中し、機銃数基を薙ぎ払ったものの、被害はそれだけである。


ちなみに「大和」に命中した爆弾は、どちらも大和が最も警戒すべき魚雷に注意を向け過ぎたための被弾である。



両艦は実戦においても、その能力の高さを如実に証明してみせたのであった。





(でも、もう敵の動きは見切りましたから、次からは大丈夫ですよ・・・)





大和の口調は、喋っている内容とは裏腹に、いまだ疲れを感じさせた。



「本隊へ連絡は!」


「済みました!」


たとえ大和がヘバっていようとも、「大和」の乗組員までヘバっているわけにはいかない。


というか、戦いでは大和が全てを行なっているため、まだまだ元気一杯である。



「大和」艦内では、航空隊の襲来から非常に慌しく皆が動き始めた。


唯一の例外と言えば・・・



「・・・隊長、我々って期待の新組織ですよね?」


「被害は無いに越した事は無い。・・・しかし、もう少し出番があっても・・・」


大和の提案で新設された応急処置部隊であろう。


職務の性質上、暇に越した事はないのだが、今の艦内でやることがないというのも寂しいらしい。




「おい、大和」


後処理やこの先のことに関し、幕僚達との話し合いを終えた高柳艦長が大和へと話し掛けて来た。



米航空隊が去ってから、1時間ほど経過しようとしている時であった。


頃合を見計って突入しただけあって、周囲は間も無く完全に闇に閉ざされようとしていた。


もう明日夜が明けるまで、航空機に襲われることはないだろう。



ちなみに、現在「大和」と「武蔵」は30ノットの速さで進んでいる。


限界ギリギリの速度で行かないのは、能力を秘匿するためである。


夜のうちにハワイを攻撃する気が無い以上、これ以上の速度を出す必要がないのだ。





(ん〜?何か用?)





この1時間で大分疲れが取れたのだろう。


大和の口調に気力が戻っていた。



「進路を変えるぞ」





(・・・はっ?)





高柳艦長のいきなりの言葉に、唖然とする大和。


どうやら高柳艦長はいきなり要点から話す習性を持っているようだ。



ちなみに、現在「大和」が取っている進路はハワイまで一直線の航路である。





(何で?このままハワイまで行った方が敵を誘き出せると思うんだけど)





大和のもっともに思える驚きも、相変わらず高柳艦長に何ら表情の変化をもたらさなかったらしく、高柳艦長は表情を
変えずに続けた。



「さすがに敵戦艦の真っ只中に突っ込む気はしないだろ」





(??・・・どういうこと?)





「さっき襲ってきた航空機。あれは紛れも無く陸上機だっただろ?」


意味がわからない様子の大和に、高柳艦長が説明を始める。



「これがどういうことかわかるか?」





(う〜ん・・・敵は空母を温存している?)





大和は頭を懸命に、本当に懸命に捻って、ようやく1つの答えを導き出すものの



「違うな」


あっさり否定された。


哀れなものである。



「我々が戦艦にしては高速を出せることは相手はもう知っている。そして、その速度を持ってすれば今夜中にハワイを
攻撃出来るところまで辿り着ける」





(でも、それって陸軍に任せただけじゃないの?)





繰り返すが、陸軍だけではない。



「なぜ対艦攻撃で劣る陸上機に任せるんだ?」





(う〜ん・・・戦艦の相手は戦艦に任せるつもりとか?)





「それなら陸上機も温存するだろ」


畳み掛ける高柳艦長の言葉に、大和はギブアップである。





(もったいぶらずに教えなさいって)





「答えは簡単だ。敵の空母はハワイ防衛の任務に就いていない」


高柳艦長の言葉は大和に驚きを与えるよりも、むしろ呆れ返らせた。





(あのね〜、そんなこと言ってミッドウェイで危なかったんでしょうが)





ミッドウェイ海戦。


米空母が中々発見されないことで、機動部隊内部には「空母はいないのでは?」という憶測も流れた。


史実において完敗を喫したのは、その油断もあっただろう。



当然大和はそのことを知っている。



「あ、いや、言い方が拙かったか。敵の空母がハワイ近辺にいることは間違いない」


大和の言葉を聞いた高柳艦長が、少し艦橋を歩き回りながら言葉を選ぶ。



「ただ専守防衛で終る気はない、そういった意味で言ったんだ」





(専守防衛じゃない?つ〜ことは・・・)





ここまで言われれば、大和でも理解出来る。



「こちらの哨戒線を抜けて輸送船団に近づいているとは思えん。恐らく・・・」





(空母を狙ってる・・・)





今次大戦で空母と航空戦力が主役である事が明らかな以上、当然の結論であった。





(最大でも4隻なのに、こっちの11隻に挑むのか・・・)





大和は米軍の心意気を改めて思い知らされる。



「敵の艦載機は多いからな。不意をつかれれば大きな損害を受けるだろう。先ほどそれを本隊に連絡したんだ」


その連絡を受けた本隊では、戦艦部隊が空母部隊との距離を縮め、いつでも援護に回れるような隊形へと変更されて
いた。





(なるほどね。・・・って、ちょい待ち)





過去の反省を踏まえた連合艦隊の行動に感心しながらも、大和はとあることに気がついた。





(ひょっとして敵空母をまだ発見出来てないの!?)





「・・・敵の戦艦部隊は発見してあるぞ。戦艦だけで10隻ほど揃った大艦隊がハワイ前方に控えてる」


弱い所を突かれた高柳艦長は、こめかみに汗を浮かべながらも話題をすりかえる。


そのすりかえられた話題自体、結構とんでもない話なのだが。




(・・・この時期もう敵の新型戦艦がいるはずだけど、それは?)





「・・・きっと空母と一緒だな」


高柳艦長の汗が額にまで流れ出す。





(ひょとして、僕らが突撃したのって敵空母がいるかどうか調べるため!?)





「・・・さて、敵の大艦隊の真ん中に突っ込まないために進路を変更するか」


平静を装いながらも、高柳艦長から流れ出る汗は増す一方だ。





(索敵のミスをこっちに回すんじゃな〜い!!)





「ええ〜い、しつこい!貴様も連合艦隊の一員なんだから、それぐらい当然だ!」


「大和」艦内は激戦を控えているにしては、あまりにも子供じみた喧嘩であった。



ちなみに、その頃「武蔵」は・・・





(どうやら相手の空母は、こちらの空母を狙っているようですね。やはり私達の相手は戦艦ですか)





1人で正確な結論に辿り着いていた。


実に優秀な船魂である。











今次大戦の趨勢を握るハワイ決戦。



その緒戦は「大和」、「武蔵」の驚異的な能力で日本軍に軍配が上がる。



しかしながら、いまだ姿を見せない米空母群。



「大和」の前に立ちはだかる戦艦部隊。



大きな損害を受けながらも、いまだ多大な戦力を残すハワイ航空隊。




真の戦いは、まだまだこれからであった。



















<次回予告>


開始される大空中戦。


お互いに向け放たれる航空機という名の矢。


待ち受ける航空機の盾。



史上最大の空母決戦はいかなる展開を迎えるのか!?





次回!


「愉快な大和君、戦場を逝く」


「第20話 賽は投げられる」





太平洋の歴史がまた1ページ。





(・・・僕らのいないところで)











〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜


どうもやまとで御座います。



何かここに書くこともないんですが・・・


とりあえず、次回は空母戦がメインになるので、主役は目立てません(笑)


そうなると、ただの仮想戦記になってしまうんですが(汗)




それではまた次回お会いしましょう〜。






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