(ぐ・・・がっ・・・・)





一気に船足を落とした「大和」から、大和の呻き声が漏れる。



「応急処置班を急がせろ!それから被害状況を纏めろ!!」


戦闘指揮所では高柳艦長の檄が飛び、全ての乗員が少しでも「大和」の被害を抑えようと動き出す。





(大和さん!!一体何処から・・・いた!)





全身を震わせ、一目で分かるほどの大被害を受けた「大和」を心配しつつも、武蔵の眼は砲弾を発射した「コロラド」を
捉え





(許しません!!)





裁きを下す。


「武蔵」から放たれた9つの砲弾は3000メートルの距離からでは外れるはずも無く、1度に6発までが「コロラド」に命
中。




「ふはははは!見たかあの野郎!!」


狂ったように高笑いを続ける司令官を、行動を悔いていた参謀、そして命令を忠実に守った1番砲塔に残る米兵もろと
もこの世から消し去った。


「コロラド」自体も、直後に8本の酸素魚雷が命中したことで記録的な早さで海上からその姿を消すこととなった。







「愉快な大和君、戦場を逝く」


「第27話 勇者達の帰還」





(くぅ・・・)


(大丈夫ですか、大和さん?)





「コロラド」の撃沈を確認した武蔵は、懸命に痛みに耐えている大和へ心配そうに見やる。





(だ、大丈夫です・・・多分。これくらいで・・「大和」はビクともしません・・・滅茶苦茶痛いけど・・・)





それでも痛みに慣れて来たのか、大和は途切れ途切れながら返事を返す。


どう考えても虚勢ではあるが、口調からはある程度の余裕は出来たことを窺わせる。


さらに大和は平気さをアピールしようと、ほとんど止まっていた「大和」を動かそうとするが



「待て!まだ動くな!」


それには高柳艦長から待ったが掛かった。





(・・・え・・・?)





「まだ浸水が止まっていない。出来るだけ動くな」


船が動くということは、相対的に水圧が増し浸水の速度が増す。


そのため、浸水が起こった時は速度を落とすのである。



本来であれば、浸水が起こるのはほとんどが戦闘中であり、速度を落とす余裕がないことが多い。


幸い現在の大和は追撃戦の最中であるため、無理して速度を出す必要が無い。


もちろん、敵戦艦の追撃を諦めれば、という条件付ではあるが。





(と、というわけらしいです・・・僕は気にせず武蔵さんは敵艦を追ってください)





止む得ず大和は戦闘の継続を断念し、敵艦撃破を武蔵に託す。





((よ、良かった・・・本当は滅茶苦茶痛くて動きたくないし・・・))





本心は隠して、である。





(そうですね、わかりました)



(・・・あ、あれ?)



(?どうかしましたか?)



(い、いえ・・・あの・・・その・・・)





あっさりと頷き、敵艦の追撃態勢に入る武蔵を慌てて呼び止める大和。





((お、おかしい・・・ここは普通・・・(大和さんを放ってなんておけません!)みたいな展開になるはずでは・・・))





戦闘中、しかも大損害を受けているにも関わらず、余裕と言おうか能天気と言おうか。


とはいえ、当然のことながら大和の願望は叶えられそうにはなかった。





(え、え〜と・・・あの〜・・・そ、そうだ!あそこに見える1隻はここからでも狙えますから、僕が引き受けます!)





少しでも自己アピールを、と大和はキョロキョロと辺りを見回し、1隻の生贄を見つけた。


ちなみに、この時何とも理不尽な理由で生贄に選ばれたのは「アイダホ」であったが、実に些細なことなので気にしない
でおくことにする。





(大丈夫なのですか?)



(全然大丈夫です!)





心配する武蔵に対して、胸を張るように答える大和であったが



「馬鹿を言うな!そんなことしたら速度を落としている意味がないだろ!!」


「全然」という単語の使い方を間違えている上に、大丈夫なはずもなかった。


胸を張る行為、あくまでイメージである、が傷に響いたのか、ちょっぴり涙目にもなっている。



とはいえ、今更「やっぱり無理です」などと大和が武蔵に言えるはずも無く、高柳艦長の言葉を無視して「アイダホ」への
砲撃を実施。


「アイダホ」が脚を止めるまでの6斉射





(ぐわぉぅっ!!は、腹に滅茶苦茶響く・・・)





痛みに耐えながらの砲撃を余儀なくされたのであった。






海戦はそれから30分後、「武蔵」の砲弾によって米艦隊最後の戦艦「ミシシッピ」が最後を迎えたことで収束。


連合艦隊は被害の集計や乱れきった隊列の再編成などのために追撃を中止し、ハワイ沖を舞台にした水上決戦は幕
を閉じた。



そして集計された被害は、勝利を収めたはずの連合艦隊首脳陣をしても、一部蒼くさせるのに充分であった。




この海戦における日米両軍の被害は以下の通りである。




<喪失>


<戦艦>


日本側・・・「長門」「日向」「伊勢」「山城」


米国側・・・「コロラド」「ウェストヴァージニア」「メリーランド」「テネシー」「ペンシルヴァニア」

      「ミシシッピ」「ニューメキシコ」「アイダホ」「アーカンソー」「テキサス」「ニューヨーク」


<重巡>


日本側・・・「古鷹」「加古」「衣笠」「三隅」


米国側・・・「シカゴ」「クインシー」「サンフランシスコ」



<軽巡>


日本側・・・3隻


米国側・・・4隻



<駆逐艦>


日本側・・・14隻


米国側・・・19隻




<大破>


日本側・・・無し(大破艦は全て自沈)


米国側・・・重巡2
 
      軽巡3

      駆逐艦6







上記の他にも、米国側は既に戦艦2隻(「ノースカロライナ」「ワシントン」)、重巡1隻、軽巡5隻、駆逐艦17隻を「大和」
「武蔵」との戦いで失っている。


これらの被害、特に旗艦である「長門」を失ったことに、連合艦隊首脳陣は顔を蒼くしたが、それ以上に頭を抱えたくな
ったのは米海軍の首脳陣であろう。


戦いに参加した戦艦の全てを失うなどという事態は、常識からいってありえないのである。


戦艦の被害の割りに、巡洋艦の被害が少ないようにも見えるが、これは損傷を負った巡洋艦が戦場を早期に離脱した
ためであり、むしろこの程度の被害が普通であった。



圧倒的な砲力と、それを生かす優れた命中率、そして逃亡を許さない圧倒的な速力。


その3つ全てが揃った「大和」「武蔵」の存在があって初めて生じる異常事態である。



なお、「長門」に乗艦していた山本長官以下の首脳陣はしっかりと脱出を果たしている。



また、「大和」「武蔵」と戦った米海軍の軽巡以下の損害が、連合艦隊主力と戦った場合と大して変わらない。


軽艦艇相手に、時に主砲を使ってまで確実に敵艦を沈めていく「大和」「武蔵」の戦いの成果と言えよう。




後に「第一次ハワイ沖海戦」と呼称される戦いは、この段階を以って終了とされる。



被害を総括すると



連合艦隊が戦艦4隻、空母3隻(正規空母1、中型空母1、軽空母1)、重巡4隻、軽巡3隻、駆逐艦15隻を喪失。


対する米海軍は戦艦13隻、空母4隻、重巡7隻、軽巡10隻、駆逐艦39隻を失ったことになる。



連合艦隊は全体の約3割、米海軍は主力艦のほぼ全てと、巡洋艦以下の半数を失ったことになる。


何十年もかけて整備してきた大艦隊が、一夜にしてこれだけの被害を受けたのである。


両海軍の首脳部の衝撃は大きな物であっただろう。



特に米海軍の被害は、普通の国であれば降伏すら余儀なくされるほどの被害である。




しかしどちらの政府も、この場合主に米国側であろうが、戦いを止めることを望まない以上、前線での戦いは続く。


長く、そして短くも感じられた1日が終わり、翌日。



連合艦隊の生き残り空母8隻から飛び立った攻撃隊がハワイを再攻撃。


ほぼ壊滅状態にあった在ハワイ航空隊も、夜のうちに懸命に補用機の組み立てや損傷機の修理を行いこれを待ち受
けたが、いまだ400機を越す稼動機を有している連合艦隊の攻撃を食い止めることは出来なかった。



丸1日、6派にも渡った連合艦隊の攻撃機により、ハワイの各飛行場は完全に沈黙。


ハワイ上空の制空権、制海権は完全に連合艦隊のものとなった。



この時点で、米国はハワイの防衛を断念。


真珠湾への入港を見合わせていた米艦隊の残存戦力は、進路を西海岸へと変更せざるを得なかった。


この結果、米艦隊は大破認定されていた艦のうち特に被害の多かった艦を自沈処理し、新たに重巡1(ルイスヴィ
ル)、軽巡1、駆逐艦4を損害に加えることになった。



さらに翌日、海戦による被害が比較的少なかった金剛型戦艦4隻を先頭に、満を持して上陸部隊が上陸を開始。


米海軍の水上部隊は既にハワイを諦め、本土へと向かっていたため、これを妨害する戦力は存在していなかった。



戦艦4隻を含む多数の艦艇からの艦砲射撃。


さらに頭上を、ハワイへの攻撃でさらに数を減じたとはいえ、300機近い航空機によって守られた上陸部隊は、機甲戦
力で劣勢であったために、苦戦を強いられながらも占領地を拡大。


上陸後、1週間が経過する頃には、米軍の激しい抵抗を排除して各種施設や石油タンクなどをほぼ制圧。



占領後のことを考えて、あえて航空機による攻撃も控えておいたものの、米軍自らの手によって半分以上が破壊され
ていたことは、仕方のないことであろう。


なおこの際、真珠湾に着床していた「アリゾナ」「オクラホマ」が、実際引き上げられるかはさておき、連合艦隊の手に落
ちた。



そして残った米陸軍は内陸の山間部などに立て篭もり、なおも抵抗を続けたが、制空権、制海権を握られている状態
では補給も絶え、徐々に追い詰められていった。


そして1ヶ月余りに及び戦いの末、1942年10月8日、ついにハワイ島及びそれに連なる諸島は全て陥落。



ほぼ同時期、ハワイに近い米軍の拠点であったジョストン島も、陸上戦力の不足から占領こそ行なわれなかったもの
の、連合艦隊の攻撃によって無力化。


連合国が太平洋上に有する拠点は、フィジー諸島とポートモレスビーを残すのみとなった。




ハワイ占領後、連合艦隊の各艦艇は一部を除き一旦本土へ帰還。


日本中で熱い出迎えを受け、海軍省には多額の募金が寄せられ、そして提灯行列が見られた。



戦争のことがよくわからない大多数の国民からしてみれば、「神に守られし神国日本はいまだ負け知らず」なのであっ
た。




なお、被害の大きかった「陸奥」を始めとする艦艇は一足早く本土へ帰還。


それまでにハワイ占領は時間の問題となっていたため、傷付いた姿でありながらも、日本中の視線を集める凱旋となっ
た。




さらに、速力の関係で最も早く本土への帰還を果たしたはずの「大和」と、護衛役の「武蔵」であるが





(まだお腹が痛い・・・)





「自業自得だ!馬鹿者!!」


上記のような会話が何度となく繰り返され、とても凱旋気分ではなかったことを最後に記しておく。
















<次回予告>


ハワイ陥落、双方海軍の戦力の消耗。


それは太平洋に奇妙な平穏をもたらす。


これを機に行なわれる新たな作戦。



「大和」「武蔵」の次なる戦場は何処に!?





次回!


「愉快な大和君、戦場を逝く」


「第28話 次なる戦いへ」






太平洋の歴史がまた1ページ。






(・・・出来れば痛くない戦場希望!!)










〜〜〜〜〜後書き〜〜〜〜〜


どうも、「やまと」で御座います。



27話目にして、ようやくハワイ決戦が終了。


「大和」は修理が必要ですから、当然また一気に時間が飛びます。


私の構想では作中で書く戦いはあと・・・4つか5つ。


「大和」を1回修理すれば、少なく見ても半年掛かるわけですから、終戦まであっという間です(笑)



それにしても、米国はかなりの駆逐艦を失いましたね〜。


全ては失ってもらわないと困る私の独断です(笑)


ちなみに、日本側の沈んだ重巡は、見てもらえればわかりますが、史実でもこの時期前後に沈んだ艦ですね。


生き残っていられると今後紛らわしいので、数も4隻とほどよかったため、仲良く沈んでもらいました(鬼)



それではまた次回、新たな戦場でお会いしましょう〜。




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