ver.3 fancy_books

−間主の読書感想文集−
 大学3年まで、読書には一切興味ナシ。
 夏休みの宿題の定番「読書感想文」も、生涯で一度も自分で書いた経験0。
 ところが今では、バイトで本の校正をしている始末。
 読書癖をつけてくれた師匠に感謝しつつ、どうせならと、 20も半ば近くになり、未提出の読書感想文の罪滅ぼしをすることに。


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乙武レポート
2003.7.25
『乙武レポート』 乙武洋匡
(2000年、講談社)


 乙武洋匡。『五体不満足』著者。日本一有名な障害者。スキューバダイビングの免許も、 普通自動車の運転免許も持っている、ひょっとしたら健常者よりも「何でも出来る」障害者。
 その彼が、早稲田大学在学中、TBS「ニュースの森」のキャスターとして一年間どう番組に参加した際の、その名の通り「報告書」です。『五体不満足』が大ヒットしたモノの、 まだ今日の「芸能人」(スポーツキャスター、といった方がいいのか?)になる前の彼が見た「ギョーカイ」の様子が書かれています。
 私達の多くと同じように、当初はいわゆる「ギョーカイ人」に対してマイナスのイメージを多く持っていた彼が、「森」のスタッフ達と仕事をしながらそのイメージを徐々にプラスへと修正していく様子は、評論家やメディア研究者達が語るテレビメディア制作者達についての言説が圧倒的に多い中で、非常に興味深かったですし、また、『五体不満足』が家にあるのに何故かまだ読んでいない間主にとって、彼の「障害者」としての不自由や、また当時自らとそのベストセラーとそれにともなって激変した周囲の環境についてどう見ていたのかということについて読むことが出来たというのも貴重な体験でした。
 それにしてもこの人物、本当に文章が上手と行ったらいいのか、とにかくテンポの良い、小気味の良い、そしてもちろん面白い文章を書くなあ、というのが率直な感想ですね。「五体不満足」の自分の境遇を、しっかり自分の個性にしてしまっているなあ、ということも感じました。冒頭に「何でも出来る」と書いてしまいましたが、こういう障害者「なのに」こんなことも出来て凄い、という様な見方をすること自体が不毛なこと、というのをもう一度考えました。ふむ。



マルチカルチュラリズム 2003.7.22
『マルチカルチュラリズム』
チャールズ・テイラー他著、
エイミー・ガットマン編、
佐々木毅他訳

(1996年、岩波書店)


 例えば、人種差別や女性差別の様な「差異」に起因する社会問題が存在する場合、 社会や政治は、どのように対応することが必要でしょうか?  本書によれば、私達の住むいわゆる「自由主義」を標榜している世界では、 現実として2通りの対応手段が存在します。
 一つは、「自由主義」の名の下に、即ち人間誰でも平等に扱われるべき、ということですから、 社会や公共機関、政治は常に「中立」であるべき、という考え方。
 もう一つは、これまた「自由主義」の名の下に、これまで差別によって「平等」を享受できていなかった側に対して積極的に支援をすることで、社会的な「平等」を実現すべき、という考え方。
 どちらにも正当性があることに間違いはないんですが、ここで重要な問題が生じます。 それは、どちらの場合を選んでも、「差異」をめぐる社会問題は解消されずに維持される、ということです。前者の場合は既存の社会状況が造りだしたハンディを超克することの困難がそのまま維持されてしまいますし、後者の場合は「逆差別」のような状況が生まれてしまって対立の図式は変わりません。まあ問題の種類(人種なのか性別なのか宗教なのか、等々)や、自由主義のレベル(個人レベルか集団レベルか)によっても、様々な展開が考えられるのですが、「承認をめぐる政治」と名付けられたこの一連の問題って、いわば「自由主義のジレンマ」のように感じられてしまいます。
 という様な内容を扱っている本で、特にフレンチ・カナダ(ケベック州)の事例をケース・スタディにして、個人・集団における「自由主義」や「文化の独自性」ということについて考えています。 一つの論文(チャールズ・テイラー)に対する他の学者のコメントと、編者(ガットマン)の解説を併記する、という構成になっていて、一つの論文(主張)をごり押しする、という本ではないのも、こういう内容を扱う人達のマナーなのかな? という気もして興味深く、また小気味よかったとでもいったらいいのか、とにかく個人的にもかなり関心のあったテーマだったこともあり、非常に勉強になりました。
 それにしても、やっぱり翻訳された本のせいか、馴染みのない難しい言葉と独特(日本人の文章と違う、という意味)の書き方なので、本当に読んでて疲れますね、、、。もっと簡単に言えよ! とか思ってしまう。。。修行が足りないッス、、、(悩)。



動機
2003.7.20
『動機』 横山秀夫
(2002年、文春文庫)


「ちょっとしたこと」が最悪の展開に、、。「魔が差した」、、。
 目の前が真っ白になったり、「どうしてこんなことに、、、」と放心状態になってみたり。 「自分は悪くない」と信じようとしたり、「あいつのせいだ」と恨んでみたり。 駈け巡る妄想や焦燥、動揺、最悪の展開、邪推、現実逃避、孤独感、葛藤、言い訳、、、等々。 誰しも経験あることなんじゃないでしょうかね?
 誰しも経験のあることだからこそ、このあまりにも「人間くさい」「弱い」主人公達に「何だ、こいつ」 と感じる瞬間もあり、解るなあ、と思う瞬間もあり、またついついほっとしてしまったり、と、、、。 とにかくそういう心の「揺らぎ」というか、色々なことがまぜこぜになった動きを表現するのが、 非常に上手い人だなあ、というのが作者の印象でした。 他の作品も読んでみたくなる様な、それくらい面白かったです。
 何て言うのかな、何かあった時って、みんな自分を「悲劇の主人公」のように思ってしまうけれど、 そういう葛藤や弱さとせめぎ合いを抱える人達同士が関わり合いながら、 それぞれの事情がちょっとした拍子に露出する、、、そんな偶然をきっかけに、 色々な「出来事」が各自の目の前に現れていくのだなあ、というか、上手く表現できないのがもどかしいですが、とにかくそんな事実(きっと事実なのだと思う)に改めて気付かされる、というか、、、。
 まあ読んでみて下さい。そう言うしかないのがまたもどかしい、、、(逃)。



デジタル・メディア社会
2003.7.14
『デジタル・メディア社会』 水越伸
(2002年、岩波書店)


 現状、自分自身の社会的な生活状況はお世辞にもいいとは言えませんが、 こういう風に、自分の興味ある分野について本を読み耽ったりすることが出来るのは、 一つメリットといえるかも知れません。バイトで読む本とはまた違い、 この手の本は色々考えることも多いし。
 まあ大雑把に言うと、インターネットやデジタルのコミュニケーションツールの普及以降、 従来の(現在進行形の)マス・メディアを中心とした社会状況がどのようになっていくのか、 またそこにおいて「メディア・リテラシー」というのがどのように活用されるべきか、という 21世紀の社会をメディアという側面から展望した本です。 「インターネットのマス・メディア化」とか「多文化・複合的メディア・リテラシーの必要性」とか、 そこに置いて中心になるであろう「メディア表現への欲望」と「シンパシー」についてとか、 まあ個人的に興味深い含蓄が多い本でしたが、同時に違和感を感じる部分も多かったですね。
 この手の本を読んだり、いわゆる「知識人」のインターネットなどのニュー・メディアについての 発言を聞く度によく思うのは、インターネットの意義について、 「個人が情報を発信することが出来る」=「個人がマス・コミュニケーションツールを持つことが出来る」 という点をしきりに強調しているところとでも言いましょうか。 確かに、それは非常に意義深いし重要なことだと思うけれど、果たしてそれだけでしょうかね?  じゃあこの自分のサイトの様な個人サイトなんか、 やっぱり誰かが言った様に「ゴミ同然」ということになるんでしょうか?  確かに日頃マス・メディアに関わっていて、自分の主張や見解が検閲・編集される状況を 快く感じていない人達や、社会的に発言したいことがあってもその場を持たない人達は、 自由に、制約無くそれらをぶちまけられる場所としてのネットって非常に魅力的だということは解るんですが、 そうではなく例えば毎日ただ自分の日記を公開して、身の回りの人達と掲示板でコミュニケートして、 という行為ってじゃあどう考えたらいいんでしょうかね? 「社会は大きく変わる!」みたいな言説に、「はいはい。」って思ってしまう部分って、そこなんだよなあ。
 あ、でもそれはこの本だけじゃなくて、色々読んでて感じることであって、 この本自体は結構スラスラ読めるし、この手のことに興味のある人にとっては買う価値あると思いますよ。 ってなんかやけにフォローじみた結びだなあ、、、。別に俺に印税が入るワケじゃないのに。。。



もう、君には頼まない
2003.7.3
『もう、君には頼まない ──石坂泰三の世界』 城山三郎
(1998年、文春文庫)


 石坂泰三、って誰??
 俺も知りませんでした。第一生命の社長として同社を業界トップに押し上げた男であり、 戦後の東芝を立て直した社長であり、初代経団連会長や大阪万博の協会会長を務めた、 戦後日本の経済復興の中心的人物の一人だそうです。どこの誰かは知らなかったけれど、 読んでみるとこの人物、自分にとっては非常に魅力的な人でした。 その業績よりもなによりも、その人間性。失礼な言い方をすれば、 何だか凄く自分と似ている気がするというか、同じ匂いを感じるというか。 こういう大人になりたい! って強く感じましたね。羨ましい。
 それはそうと、この本の登場人物達、つまり明治・大正期に生まれて 日本の戦後復興を支えた人々の肖像に触れてみて、 そのパワーというか、偉大さというか、すげえな、って心から思いますね。 どうして今日本はこんなんなってるんだろうな、って強く思ってしまいます。 彼等もそう思っていたみたいで、引退後、後を受けた世代を憂いている語りが非常に多い。 形式に囚われず、気骨で、先見の明や大局を見る眼を持っている。 とにかく個性的な人間が多いのに驚かされます。 ひょっとして彼等が不老不死だったら、今の未曾有の不景気はなかったんじゃ?  なんて思ってしまいます。
 石坂泰三自身がいう様に、やっぱり「ハングリー精神」が大切、ということでしょうかね?  頑張らないとなー。



メディア文化の社会学
2003.7.1
『メディア文化の社会学』
加藤晴明

(2001年、福村出版)


 図書館で何気なく借りた本その2。
 最近は「メディア」を扱った本が流行りで、まあ間主自身もそういうことに興味があるので ひとよりは結構マメにそういったテーマの本に触れているつもりでありますが、 そのほとんどが「マスメディア」「マスコミ」について扱ったものなんですね。 それに対してこの本は「パーソナル・メディア」として、(携帯)電話、e-mail、ゲームという 私達が普段最も身近に体験しているメディアについて書いたモノです。  筆者自身が「自分が講義で使うための教科書として書いた」といっているように、 「パーソナル・メディア」について学ぶ上で、そこに至る今までのメディアの流れや、 マクルーハンのメディア論、マス・メディア論についての基本的な事項も大枠で網羅されているし、 また本題のパーソナル・メディアに関しては一見すると小難しい学術的な用語も頻繁に登場しますが、 何せ取り扱っている「メディア」が自分たちにとってあまりにも身近なモノですので、 具体的に考えることが出来るので結構理解も早かったです。 ありがちなニュー・メディアに対する「ユートピア」的な肯定論や 「大衆の白痴化の温床」的な否定論、はたまた「これだから最近の若者は、、、」的な 根拠のない安直な若者批判にも陥ることなく、私達ユーザーにとってこれらのメディア体験が どのようなものであるかについて、バランス良く捉えてあるという印象でした。
 特に良かったのは、e-mailのようにみんな使っているのにメディア論の領域で話題になって いなかったモノや、TVゲームのように全くその価値というかその登場・存在が評価されていない モノについて詳細に扱っていることですね。つーか、何でみんなそんなにゲームを目の敵にするんでしょ?  特に「知識人」「大人」を自負している人程その傾向が強いですよねえ。 そういう人に限ってゲームに「食わず嫌い」な人が多い事実もあいまって、 ゲーム第一世代の間主はそういう言説に触れる度に不愉快な気持ちになってきたモノです。 そういう想いもあるせいか、非常に愉しく読ませて頂きました。 こんどはゲームについて研究してみたくなってきたな、、、。
 ちなみに、この本は買う価値もあると思います。高いけど(2300円)。



イメージ画像はありません 2003.6.28
『異文化・非言語グローバルコミュニケーション』 小中陽太郎
(1999年、平原社)


 図書館何気なく借りた本。
 で、何気なく読んだんですが、1章「文化」の中に収録されている、 「源氏物語のコミック化とその英語版―英訳にみる文化比較」という話が非常に面白いです。 マクルーハンなんかを読んでイマイチよく解らなかった人達は、絶対によく解ります。 間主自身も思わず「目から鱗」な体験だったし、日本絵画の遠近法の話とか、 驚きもいっぱいでした。
 でも、これに期待して最後まで一応読んだけれど、後はハッキリ言って大したことありません。 大体2600円って高すぎるし、買うほどの価値はないでしょう。 でも、図書館で借りて読むだけの価値は保証します。漫画を日頃読んでいる人には、 本当に「ハッ!」とさせられる内容です。騙されたと思って読んでみて下さい。 騙されないし、騙しません。



イメージ画像はありません 2003.6.28
『証明』 松本清張
(1976年、文春文庫)


 う〜ん。。。この作品をどのジャンルの小説としてみればいいのか解りませんが、 とにかくまあ面白みのない本でしたね。。。
 全部で4つの短編が収録されているのですが、どれもいたって中途半端なモノばかり。 前3編は、「とにかく異常な人間模様の中に犯罪は起こるのだ」ということをひたすら繰り返しているようで、 かと思えば、最後の1編(「留守宅の事件」)は妙に推理小説じみた展開を見せるモノの、 結局当初から最も怪しげな人物が犯人で、予定調和以外何もない、しかもトリックは見事だが 肝心の加害者の犯行動機があやふやなまま終わってしまう、という全くしっくりこないモノだし、、、。
 長編推理小説はそれなりの評価を得ている(間主は読んだことがないので何も言えませんが、、、) 作者ですが、短編の方は本当に中途半端でした。 そういえば、最初の話(「証明」)の主人公は芽が出ない同人作家の妻だったんですが、 その作家を巡る出版事情の描写を、全編読み終わった今考えてみると、 「じゃあお前は売れてるからこんな本でも良いのか!?」みたいな突っ込みを入れたくなりますね、、、。 もし自分が編集者だったら、絶対描き直しをしてもらいたい本であることは確かです。 まあ、面白味といったら、そんなところでしょうかね。



くるぐる使い
2003.6.20
『くるぐる使い』 大槻ケンヂ
(1998年、角川文庫)


 へええ、大槻ケンヂって本も書いてたんだー。
内容はいわゆる「超常現象」を題材にしたSF小説ですが、この中に収録されている2編 (『くるぐる使い』と『のの子の復讐ジグジグ』)は、星雲賞(SF小説の年間MVP的な賞だそうです) を2年連続で受賞したんだそうです。確かに面白いし、描写も正に物書き、といった風で、 特に読者に恐怖を与える表現は本当に読んでて寒くなりました。
 ところで、超常現象や怪奇現象って、信じますか?
 個人的には信じていますが嫌いです。ので、こういう本もあまり読みたくありません。怖いし。 が、そんな間主にとってこの本が特に面白かったのは、 超常現象を題材にしながら、それに対する強烈なアンチテーゼが しっかり主張しているところですね。超常現象と科学と、そして青春(作者本人は「超常現象青春小説」といっている)。 この三本柱のお陰で、個人的にSFはあまり得意じゃないんですが、結構興味深かったです。
 それにしても、やっぱこの人多才だな、と思いましたね。



画像は単行本のモノです
2003.6.9
『蒼い記憶』 高橋克彦
(2003年、文春文庫)


 何でしょう?
 短編集なのですが、各編読み終えた後に何と表現したらいいのかわからない 微妙な感じになりました。 何とも暖かな気分になったり、うすらさむい気分になったり、く〜だらな〜い、と思ったり、、、。
 それぞれ話のカラー(ジャンルみたいなモノ。適当な言葉が思いつかなかった)は違うんですが、 共通しているテーマは「忘れられてしまった記憶」。ちょっといい話あり、 隠されていた秘密あり、ホラーあり、、、。 記憶って、「想い出」だったり、「消したい過去」だったり、 「信じられないような話」だったりと、色々な側面がありますが、この作品に収められている 12の話は、私達が「記憶」というモノに対して 持っているイメージを一つ一つ取り出して表現したような作品だと思います。 そういう意味では、「蒼い」っていうのも、「青い」(青春時代のこと)と同時に 文字通り「蒼い」(薄気味悪いもの)という意味なども含まれて、 「記憶」の持っているアンビバレンツな感じがよく出てるなあ、なんて個人的には思ってしまい、 内容よりもタイトルに感心してますが、、、。
 ちなみに、この本のタイトルでもある「蒼い記憶」という話が、一番面白くなかったです。 個人的には、「愛の記憶」、「水の記憶」、それから「嘘の記憶」が気に入ってます。 この3つでも、500円ちょっとなら買っても良いと思いました。

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