禁煙したい方に(後半)
(こっちを見てない人は、先にこっちを見てください)
あんなことがあったせいか、すっかりタバコを止め、
真面目に育児をするマサコに対し、
ヒロシは宣言どおり、全く育児を行いませんでした
サチエと顔をあわせても、
何もしゃべらず、
表情も変えず、
何も見ていないかのように過ごしていました
ただ、不妊症で、体も弱っているマサコを見かねて、
医療費や、電動車椅子代、
それに関わる様々な道具の費用は、ヒロシが出すと言いました
それでもヒロシのやりどころの無い、うやむやな気持ちは消えず、
ただ、タバコを吸う本数が増えていきました
ヒロシのうやむやな気持ちとは裏腹に、
サチエはすくすく成長していきました
不幸中の幸いか、歩行以外には障害は無く、
いろんな言葉も覚えていきました
「パパ、ママ」
と言うようになり、
それを聞いたヒロシは、
不本意にも、少し笑ってしまいました
さらにサチエは大きくなって、
幼稚園に入る年齢にまでなりました
そんなことは全く考えてなかったマサコに、
ヒロシは、あるパンフレットを持ち出しました
「そこに書いてある幼稚園なら、
障害を持った子も持ってない子も、みんな受け入れてくれるそうだ。
場所も近いし、
そこの小学校も同じ系列だから、すぐ入れるだろう。」
そうヒロシはぶっきらぼうに言うと、
マサコは泣いていました
「行ってきまーす」
無事、幼稚園から小学校に入学したサチエは、
明るく、やさしく、元気な女の子になっていました
ただ、未だに自分の身の振り方、
我が子の愛し方を見つけられないヒロシは、
「行ってらっしゃい」も言えず、
黙ってタバコの火を消し、会社に向かいました
サチエが小学校3年生になった頃、
あるとき、学校から家に、
「サチエさんが、車椅子のせいか、イジメみたいなことをされていました」
という通告がされました
そんなことは一切言ったことがなかったサチエに、マサコは、
「ホントにそんなことされたの?」
と聞くと、
「何にもないよ。
変なこと言うヤツラは、無視しとけばいいんだもん。
あたしは大丈夫だから、お母さんは心配しないで。」
と答えました
サチエはとても気丈で、
物心ついてから、2人の前では泣いたことがありませんでした
今回のイジメは本当に大したイジメじゃなかったのですが、
そのことがあって以来、
マサコはときどき、夜、泣きながら、
「ゴメンね、サチエ。
わたしがタバコなんか吸ってなかったら、
こんなことにはならなかったのよね。
ゴメンね、サチエ。
こんな馬鹿な母さんを嫌いにならないで。
ゴメンね、ゴメンね・・・」
と、サチエを抱きしめていました
するとサチエはその度に、
「嫌いになるわけないよ。
だって、あたしを生んでくれた、
世界でたった2人の、お父さんとお母さんだよ?
あたし、2人とも、だ〜〜〜い好き。」
と言って、満面の笑みを見せました
ヒロシはいつも、隣の部屋でそれを聞いて、
一人で泣いていました
それからもヒロシは、相変わらず無愛想で、
娘とは口をきかないままでした
それでも、家に帰ってサチエとマサコを見ていると、
少し満たされた気がして、
家でタバコを吸うのはやめるようになりました
それから2年後、
一家を『最後の』悲劇が襲いました
あるときを境に、ヒロシは咳と痰(たん)がひどくなりました
あまりにもひどいので、病院に行ってみると、
医者に、肺がんと宣告されました
タバコの量からも、うすうす感付いていたヒロシでしたが、
これにはかなりのショックを受けました
そして頭に浮かぶのは、
愛する妻と、
うまく愛せなかった娘のことだけ
しばらくして、大事を聞きつけたマサコとサチエが飛んできました
「あなた!!」
「お父さん!!」
ヒロシは、おもむろに差し伸べてくるサチエの小さい手をとり、言いました
「サチエ・・・
お前とちゃんと話すのは、これが初めてだね・・・
今までつらい思いばかりさせて、ゴメンな・・・
こんなお父さん、お父さん失格だ・・・
憎いだろ・・・
憎いだろ、サチエ・・・」
そう言うとサチエは、ヒロシの手をギュッと握り返して、
今にも泣きそうな目で言いました
「憎くなんかない。
憎くなんかないよ、お父さん。
お父さんがホントはやさしいってこと、
あたし、ずっと知ってたもん。
憎いのは、タバコだよ。
あたし、お父さんとお母さんを苦しめる、タバコが憎いよ。」
そう言うとサチエは、
2人の前で、初めて泣きました
そしてその涙は頬を伝い、ヒロシの手の上に落ちました
ヒロシの心の汚れは落ちましたが、
肺の汚れは落ちませんでした
・・・
・・・という話でしたが、
どうでしたでしょうか?
なかなか、目頭が熱くなったでしょうか?
禁煙したくなりましたか?
ま、ウソ話なんですけどね(笑)
みんなダマサレた?
「サッチャンかわいそう」って、泣いちゃった?
ん、人をおちょくって楽しいかって?
いやー、全部ウソを言ったつもりはないですけどねー
まーこれがホントに、ただのウソ話かどうかは、
あなたがこれからもずっとタバコを吸い続けてたら分かりますよ
どーーん!!!
「笑うせぇ〇すまん」っぽく
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