すいばり
突然ですが、みなさん
『すいばり』という言葉を知っていますか?
広島・山口あたりの田舎っ子や、福岡の北九州の方の人たちは
「あ〜、知ってる!!その言葉、懐かしい〜!!」
って思ってるでしょうか
他にも『しいばり』『すばり』なんて言い方もあるようで、
そっちの方がピンとくる人もいるかもしれません
結局『すいばり』とは何か?
正解は、
「枯れ木や材木を、その繊維に沿って撫でた時に刺さることがある、
黒く細い木のトゲ」
です
(6へぇ)
今「へぇ」を押した人は、
きっとすいばりのことを、トゲと言ってたのでしょう
しかし、俺ら山口の田舎っ子にとっては、
それは紛れもなく、
トゲでも何でもなく、
『す、い、ば、り』なのです
他に代用する言葉はありません
何で急にこんな田舎言語を取り出したのかというと、
ふと不思議に思ったことがあったのです
ある日、神のお告げか何かで、
急に「すいばり」という言葉が、脳裏に浮かんできました
その言葉を思い起こしたとき、
田舎の景色が、田舎の空気が、
あたり一面に広がりました
そして次の瞬間、
「この田舎っぽさ、もしや標準語じゃないな!?」
と思いました
案の定、クラスの中でも、
通じる人、通じない人がいました
(インターネットで調べたところ、
山口、広島、北九州のあたりだけで使われている方言と判明しました)
『すいばり』が周りに通じないことは、
俺の中では、かなりの衝撃でした
(これを見ている田舎っぺも、かなり衝撃のはずです)
『すいばり』なんて言葉使わなくても、
『トゲ』って言えば、何とでもなることです
実際すいばりを使わない人は、トゲって言ってました
しかし、そのトゲにわざわざ『すいばり』という固有名詞をつけるほど、
田舎の子供たちは、昔からいっぱいトゲが刺さってたのでしょう
そして何故かすいばりを使う人たちは、
田舎っ子のプライドからか、トゲという言い回しを嫌い、否定します
すいばりは、彼ら(俺ら)にとって、大事な、聖なる言葉のようです
そこで、すいばりを知ってる人も知らない人にも、
もう一度質問です
「あなたが最後に『すいばり』(トゲ)が刺さったのは、いつですか?」
俺は少なくとも、
ここ4,5年は刺さってないと思います
昔はあんなに刺さっていたすいばりです
学校で、古い机やイスを触ってたりすると、
よくすいばりが刺さりました
そして保健室に行くと、
先生が針とピンセットを持ち出して、うまく抜いてくれました
放課後、林の中で遊んで帰ったときにも、知らぬ間に刺さってたりして、
母さんに抜いてもらったりしました
(しかし母さんは保健室の先生よりお下手で、いつも痛かったです)
自分で抜こうとしたら先っちょのへんが折れたりして、なかなか取れなくなって、
底知れぬ不安と恐怖に、泣きそうになったりしました
昔はこんなにいっぱい刺さっていた『すいばり』
何故今は刺さらなくなったのでしょうか・・・
それは、『大人になったから』です
古い材木を見ても、
軍手をつけるなどして、気を付けて持てるようになりました
用もないのに林に入ることなんかなくなりました
すいばりが刺さるような古い机やイスも、使わなくなりました
もう保健室にすいばりを抜いてもらいに行くこともありません
もう母さんの下手な抜き方で、痛い思いをすることもありません
もうすいばりが抜けなくなって、泣きそうになることもありません
『すいばりが刺さらなくなる』ということは、
『大人になる』っていうことなのです
そう考えると俺は、
急に切ない気持ちになって、
『すいばり』という懐かしい思い出の言葉を、
とても遠くに感じました
すいばりが刺さらなくなった俺を見て、
あの頃の、すいばりが刺さってる俺は、何と言うでしょうか
きっと、
「すいばりを抜いてくれ」と言うでしょう
そのとき俺は、
やさしく抜いてやることも、
痛い思いをさせて抜いてやることも出来ず、
ただ、
「保健室に行っといで」
と言うしかできないのでしょう
こんな俺や、
若くして親になった人たち、
これから大人になっていく人たち
そんな人たちに必要なのは、
『上手い金の稼ぎ方』じゃない
『上手い料理の作り方』じゃない
『子供の上手な育て方』じゃない
『やさしい、すいばりの抜き方』
・・・愛は、そこから始まるのです(大マジメ)
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