15日の夜、
通夜が開かれたんだ
葬儀の準備ってのは、大変だね
悲しみに浸るヒマもないんだ
親戚の人は、遠いところから宇部の片田舎までわざわざ来てくれて、
一緒に通夜を迎えてくれたよ
にぎやかになって、よかったよ
そして通夜には、たくさんの人が参列して下さった
久しぶりに会った友達もいたよ
見飽きてるぐらい見てる顔もいたよ
嬉しかったよ
でもボクが一番嬉しかったのは、少年野球の人たちが来てくれたことだったんだ
懐かしかったなぁ
いろいろ思い出してしまったなぁ
でも、泣かなかったよ、ボクは
嬉しかったんだ、素直に
そのほかにもたくさんの人が来てくださったけど、
その多くが、家族みんな、見覚えのない人たちだった
父さんの、職場の人たちだ
父さんは、小学校の先生だったんだ
だけど見た目は先生っぽくないし、仕事熱心という感じでもないし、
家で仕事の話をすることも、教育について語ることも、ほとんどなかった
父さんに叱られたこともあんまりないし(子供を叱るのはほとんど母さんだったし)、
叱られてもゲンコツが一発飛んでくるぐらいで、お説教とかはあんまりされた記憶がない(お説教も大体母さんの仕事)
だから家にいる父さんを見てても、学校で先生として仕事をしている姿は、ほとんど想像できなかった
ボクが先生になりたいと思うようになったのも、一番はおそらく金八先生の影響で、
父さんの影響ではないような気がする
その父さんの、先生仲間の人たち、教え子の人たちが大勢、通夜に来てくれた
そしてその人たちは、ボクらに、いろんな話をしてくれたんだ
「お父さんは、こんなにいい先生で、こんなにみんなに愛されてたんですよ」って、
みんなで、口々に説明してくれるんだ
中には泣き過ぎて、言葉になってない人もいたよ
ボクは、嬉しかった
先生って、こんなに素晴らしい職業なんだなって思って、
なんだか、嬉しくなったんだ
やっぱりボクも先生を目指してよかったんだなって
そうしてそれから夜中まで大勢の人が来てくれて、
あわただしくて、にぎやかな通夜が過ぎたんだ
ボクは、もう泣かなかったよ
『ぼくんち』でもあったけど、通夜は、楽しい方がいいからね
親戚のみんなとご飯を食べて、お酒を飲んで、
笑い声のある、にぎやかな通夜を過ごしたんだ
次の日は、告別式だった
告別式も、平日の昼間だっていうのに、
ホントに多くの人が来てくださったんだ
ボクは銀杏BOYZの『漂流教室』を思い出して、
告別式も泣かないように、笑顔でがんばろうと誓ったよ
弔辞は、教え子の子供が読んでくれたんだ
生徒たちのリコーダー演奏をカセットテープに録ってきて、
それをBGMにして、別れの言葉を述べてくれたんだ
けどさぁ、
その子、途中で泣き出しちゃって
息詰まって、おぇおぇなってるし
もう後半、何言ってるか分かんねぇよって
あんまり泣くもんだから、参列者もみんな泣き出しちゃったし
そしてボクもとうとう、泣いちゃったよ
ボロボロ涙が出ちゃったよ、ホントにもう
そうして涙涙の告別式が終わって、
いざ、棺桶を火葬場に運ぼうというとき
最後に、いただいたたくさんの花々を、棺桶に詰めたんだ
遺族と参列者のみんなの手で花が添えられ、
棺桶の中は、これ以上ないほど美しくなった
そして葬儀屋の人が「最後のお別れをしなくていいですか?」と言ったから、
最後に家族みんなで父さんの顔を触って、声を掛けた
父さんの顔はあのときとは違って、冷たく、もう生気を感じなかった
だからボクは、また涙が溢れてきた
だって、やっぱり悲しいからさ
そのあと火葬場に行き、
遺体を焼いた
その間ボクは、火葬場の外に出てみたら、
空は綺麗に晴れていたよ
ホントに、気持ちがいいほど晴れていたんだ
またボクは、嬉しくなったんだ
そしてそのあと、残った骨を納骨し、
また親戚みんなでご飯を食べた
ご馳走だったよ
おいしかったなぁ
特にうなぎが最高だったよ
告別式は涙涙だったけど、最後にはまた笑顔に包まれて、
ホントにいい葬儀だったと思うよ
父さんの顔も、笑ってたよ
いい遺影だよ
さびしくないよ
天国の父ちゃんへ
・・・って、まだ天国行ってないのかな?
四十九日経ってないからな
ま、細かいことはいいけど、
きっと、天国に行くよ
それは確かだ
だって、こんなにいろんな人に愛されて、
いろんな人に見守られて旅立ったんだからさ
父ちゃん、
ボクは、父ちゃんの話をするとき、なんとなく気が引けるんだ
なんか、同情を買ってもらうようでいやらしいとか、そういうのもあるんだけど、
一番の理由は、自慢してるようでイヤだってことなんだ
だって、こんなに立派な父ちゃんは、ほかになかなかいないと思うからさ
イヤ、悪いとこだっていっぱいあったよ
頑固だし、意地っ張りだし、わがままだし、頭がカタイし、
自信過剰だし、意外と自分本位だし、正しいと思ったらゼッタイゆずらないし、見栄っ張りだし
だけど、最近思えば、
ボクも、そういうとこ、父ちゃんにそっくりなんだ
やっぱり親子だね
父ちゃん、
ボクは、そういうとこも全部ひっくるめて、
「ボクは父ちゃんの子です」って、胸を張って生きていくことにするよ
うん
がんばって生きるよ
がんばって生きるから、
父ちゃんは天国から、こっそり、
そんなボクを見守っててよ
ね
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